素で驚いて問えば、霞湖ちゃんはすごく苦しそうな顔になってしまった。

その言葉が霞湖ちゃんを苦しめると、傷つけるとわかっているけど、なんで霞湖ちゃん自分から頭突っ込んでしまったんだ……。

「だって、優大くん大和さんのこと「くそ女」って言ってるの、前にも聞いてしまったので……」

「………?」

前って……斎月が学校に特攻したときだよな? 斎月を引っ張り出して話したとき、そんなことを言ったと思う。

あ、そういう言葉を聞いて動揺しているのか。

誤解が解けたときも、同じ疑問を持って視線を逸らしたのかもしれない。

「いじめてないよ。こいつにそんなこと出来るの、こいつの兄さんくらい」

「ひっ!」

そのワードにはやはり反応してしまうようで、霞湖ちゃんが小さく悲鳴をあげた。

言わないようにしても、ここだけは否定するために口にしないのは難しかった……。

「人聞きの悪い……」

國陽がいつもの無表情の上に、わずかに眉間にしわを寄せて言ってくる。

「事実だろうが。……でも霞湖ちゃんがいやなら言わないようにするよ」

傷をえぐるような真似はしたくない。

霞湖ちゃんに向かって言うと、慌てたように目線を逸らされた。

難しいけど、努力しよう。

大事な存在を、自分で傷つけるような奴にはなりたくない。

「そこまで言うんなら付き合ってもいいんじゃない?」

斎月が睥睨してくるのが視界の端に入って、こめかみが攣りそうになった。

國陽も同意だと言わんばかりに軽くうなずく。

「そうだな。霞湖嬢の祖父がお前にかけた言葉は、今はなんの問題もない。優大が誰と付き合っても、結婚しても、障害はない」

「………そこまで言われると……」

意固地になっていた自分がバカみたいだ。

そもそも俺、なんでここまで誰かと付き合いたいと思わないんだ?

司の家が特殊で、おれはその本家直系っていう立場だからややこしいこともあるけど、………あ。

「あ~~~~~」