「初めまして。優大のはとこの司國陽といいます」
「大和斎月です。この前、ちょっとだけお逢いしましたよね」
國陽と斎月が穏やかな声で挨拶する一方で、霞湖ちゃんはテンパっていた。
「み、水束霞湖ですっ。はじめましてっ。優大くんのこと狙ってますっ」
「何言ってんの霞湖ちゃん!? 斎月もにやにやすんじゃねえバカ!」
なんだかもうやけくそになってキッチンでお茶の準備をしながら叫んだ。
「麦茶でいい!? コーヒーとか紅茶のがいい!?」
「キレながら注文取るなよ。麦茶でお願いします」
文句をつけながらも、一番に返事をしたのは斎月だった。
國陽が俺に向かってうなずくのが見えて、慌てたように霞湖ちゃんが「私もっ」と言った。
ドン、ドン、そ……と、三つのグラスをダイニングテーブルに載せる。
もちろんそっと置いたのは霞湖ちゃんの分だ。
いつの間にか國陽の先導で三人ともテーブルについている。
「で? なんで國陽と斎月がここにいんだよ」
改めて問えば、國陽はなんでもない風に答える。
「優大が斎月を一人でこちらへ寄越すなと言っていたから、一緒に来た」
「そういう意味じゃねえんだけど。金輪際斎月をこっちに来させるなって意味で言ったんだけど」
「まあそれは置いておこう」
「やだよ。でも、わざわざ来たからにはそれなりの理由があるんだろうな?」
國陽と斎月が隣り合う椅子に座っているので、俺は必然霞湖ちゃんの隣になる。
あのね、さっき俺一応告白? したばっかなんだよね。恥ずかしくて照れるくらいしてもいいよね?
じーっと、斎月が俺を見てくる。嫌な予感しかしないよね。
「……優大が挙動不審だな……?」
「何かやらかしたか」
斎月と國陽に続けざまに言われて、うっと息を詰める。やらかした……よね、あれ……。
「ところで霞湖嬢。先ほど優大を狙っていると言っていたけど……」
國陽が霞湖ちゃんに問うた。
呼び方それなんだ。
「は、はいっ」
そして元気よく答える霞湖ちゃん。
「恋愛的な意味ですか?」
「恋愛的な意味ですっ」
それ今俺的に触れてほしくないやつ―――――!! しかしどうだ。國陽は満足がいったようにうなずいている。
「それは僥倖(ぎょうこう)だ。優大、霞湖嬢の披露目(ひろめ)をしよう」
「いや待て國陽!?」