「霞湖ちゃんかなり強い子だよね……そんな攻撃の仕方してきた人初めてだよ」
いつの間にかどちらも止まっていた足。
霞湖ちゃんがゆっくり歩きだす。遅れて、俺も足を動かした。
「私の本来の性格はこっちですね。桐湖ちゃんと桃華ちゃんのことがあって弱ってましたけど……桐湖ちゃんは目覚めるって、私が勝手に決めたので、ちょっと立ち直れました」
そう、淡い微笑みで言う霞湖ちゃん。強すぎるわ。
「はー……うん、いいよ、好きにして」
俺ももう、反論の言葉がなかった。足はのろのろと動く。
「やった」
「でも、ひとつ言っておくね。俺、霞湖ちゃんのこと好きだから」
「はい……ええっ!?」
突然の俺の告白に、今度は霞湖ちゃんが素っ頓狂な声をあげた。
衝撃の顔で一度立ち止まって、隣を歩く俺を見てくる。
俺が歩くのを止めないでいると、すぐに追いついてきた。
「そういうことだから。それでも付き合いましょう、とは言わないから。それ承知していてほしい。すげえクズ発言だと自分でも思うよ」
クズもクズ。ごみくずみたいな言葉だ。
しかし霞湖ちゃんはへこまなかった。唇の端に微笑を刻む。
「ふっ……いいでしょう、私が優大くんを落としてみせますっ」
「そう簡単には落ちないよー?」
なんて言いながら歩いていると、俺の家の前に差し掛かった。
最短距離で幼稚園まで行くには、俺の家の前を通る道になる。
だがそこで、向かい側からきた衝撃の顔を目撃することになった。
「お。なんか楽しそうだな、優大」
と、斎月が。
「なんだ、家に着く前に会ったか」
と、國陽が。
二人して歩いてくるところだった。
「げっ! 國陽斎月……なんで――じゃないさっさと家に入れぃ!」
もう目前になっていた俺の家に、出逢い頭の國陽と斎月と、勢いで霞湖ちゃんまで投げ込んでしまった。
申し訳ないことに霞湖ちゃんは巻き込み事故だけど、でも國陽斎月のド目立ちが家の前にいるよりはいい! ……と自分を納得させていた間に、國陽斎月が霞湖ちゃんとリビングで自己紹介しあっていた。