「……ごめん、説明できない……」

この期に及んで、俺は司を取ったのかもしれない。

今、俺に選ぶことが出来る選択肢は、家のために生きるか、自分の想いを貫くか、だった。

……考えて選んだのではなく、咄嗟に選んだ答えは、長年の『俺』の蓄積か。

しかし、すぐに言葉を撤回しようとしなかったあたり、俺は司に染まっている。

……やっぱだめだよな。こんな俺では、霞湖ちゃんのそばにいるのは――

「じゃあ、私は勝手にやっていいんですね?」

霞湖ちゃんの声はハキハキしていた。

思わず問い返した。

「うん? どういうこと?」

「私が勝手に優大くんに色仕掛けするのは別にいいってことですよね?」

「………………………はいっ!?」

すんごく素っ頓狂な声が出た。

い、今霞湖ちゃんなんて言った!?

「優大くんはなんだか知らないけどおじいちゃんに止められてるみたいですけど、私は優大くんに告白しちゃいけません、付き合っちゃいけません、なんて誰からも言われてないですから」

「いやいやいや、そういう話なの!?」

「そういう話ですよ、私がふったのは」

「でも俺からは何も答えられないからね!? 俺が家優先なのはずっと前からだから――」

「ずっと前から、今まで、ですよね。でも、未来(さき)はわからないじゃないですか」

「!?」

え、霞湖ちゃん、もしかしてだけど俺が予知者(よちしゃ)って知ってる……!?

動揺のあまり言葉を失っていると、霞湖ちゃんはふわっと笑った。

「未来は確定されていないので、優大くんが私に惚れる未来を、私が作っちゃったら、ある意味既成事実ですよね?」

「………」

いや違う。俺が、未来を定めることが出来るヤツだとはわかっていない。ってかかなりな発言ぶちかましてないか?

混乱で宙に浮いた手が、行き場を失っている。

「か、霞湖ちゃん? さっきからやばめなこと言ってることに気づいてる……?」

「自覚してます。でもここまで頑なな優大くんの気を引くには強気に出ないといけないと思いまして」

……頑な、か……。