「霞湖ちゃん、次移動一緒にいこー」

「うん、今準備するね」

小埜病院での一件以来、霞湖ちゃんはクラスメイトとの間に壁をなくした。

普通に喋って、一緒に行動して、もう『友達』だ。

桐湖さんの件は変わらずのようで、まだ目を覚まさないが、悪い状況にもなっていないようだ。

「水束、馴染んでくれてよかったな」

「優大のおかげだよね」

なんてクラスの友達は言うけど、俺はそんな気持ちはない。

霞湖ちゃんがひとりで立ち上がったんだ。

そして俺との関りも、クラスの委員長とクラスメイトくらいでしかない。

李湖ちゃんがいるから、帰る時間が同じときは俺も李湖ちゃんのお迎えについていったりしているくらいが特別? な点だろうか。

しかし俺は、霞湖ちゃんのお父さんとは毎日のようにメッセージのやりとりをしていた。

時々、なんでだ? と思うけど、楽しいからいいか、と問題視しないようにしている。

霞湖ちゃんのお父さんは自ら陽キャと名乗るくらいに相応しく大変ノリのいい人で、年齢の壁を全く感じなかった。

「………」

「なんでまた膝抱えてんだよ」

昼休み、生徒会室でパイプ椅子の上で膝を抱えていた。

俺がいることに気づいたらしい律もあとからやってきて、特になにをするでもなく生徒会室で時間をつぶしていた。

膝を抱えた俺は、顔を半分膝に埋めながら答える。

「いやあ……娘に友達が出来て構ってもらえなくなった母親の心境なんだ……」

「いつの間に水束さんの母親ポジ手に入れたんだ」

「……なんで霞湖ちゃんってわかった」

「あからさまだから」

………俺、そんなにわかりやすいのかな? 霞湖ちゃんのお父さんにも指摘されていたし、ちょっとテコ入れ案件だ。

國陽の影をやっていく以上、わかりやすいのはよくない。

顔だけでもどうにかならないかと両手で頬をいじっていると、律がため息をついた。

「さっさと告りゃいいのに」