「なっ、ないですよっ。霞湖ちゃんにとって俺がそんなわけないしっ」

「ええー」

信じらんなーい、みたいな目で見られた。ギャルか。

「霞湖ちゃんのお父さんってノリいいですよね……」

「僕、もともと陽キャだから」

自分に陽キャって言葉を使う大人初めて見たよ。

なんだか、霞湖ちゃんのお父さんは自分の子どもたちと友達みたいな感じのお父さんな気がしてきた。

「とにかく、そういう話はないんで、霞湖ちゃんにも変なこと言わないでくださいね?」

「変なことって、司くんと付き合ってないのー? とか、さっさと告白しなよ、とか、あんなイケメンすぐに彼女出来ちゃうから今のうちだよー、とか?」

「の、脳内で再生されてしまう展開を展開しないでください!」

霞湖ちゃんのお父さんから霞湖ちゃんに言われる様がすぐに思い浮かんでしまい、耳をふさいだ。

イケメンではないし、彼女は作らないけど。

「ええー」

「お父さん! 優大くんに絡まないの!」

いつの間にかデイルームにやってきた霞湖ちゃんがお父さんにつかみかかった。

胸倉をつかみあげる様子がなんだか手慣れて見えたのは……気のせい?

「絡んでないよ。友情を育んでいただけ」

と、俺に肩を組んでくる霞湖ちゃんのお父さん。

まじか。俺、霞湖ちゃんのお父さんと友達になるのか。

それをすっごくくだらないものを見るような目で見てくる霞湖ちゃん。

「ダル絡みうっざ。優大くん、さっさと帰りましょう」

「あ、うん」

霞湖ちゃんに促されて椅子から立ち上がった俺に、俺の肩にかかっていた腕をほどいた霞湖ちゃんのお父さんが声をかけてきた。

「霞湖、司くん。車で送るくらいするよ。愛する奥さんの顔も見たいし」

「………」

元気になってきたのか、ニコニコと言うお父さんをジト目で見る霞湖ちゃん。

お父さんが気さくな人でも、父と娘ってこんな感じなのかな?

今日は、霞湖ちゃんのお母さんと李湖ちゃんは家にいると聞いている。

まだ、霞湖ちゃんのお母さんはあの場に耐えられそうにないから、と。