「え。なんでお義父さんが出てくるの? 司くん、前から霞湖のこと狙ってたの?」

「め、滅相もないです! ただ、ずっと前に、本屋涯の方に来てたっぽい霞湖ちゃんを見かけたことがあるんですけど、そのとき本屋涯のおじいさんに、そういう風に釘を刺されまして……」

「………? 司くんだと何か問題あるの? それとも、相手が霞湖だと問題?」

「どちらかと言うと、霞湖ちゃんの相手が俺だと問題がある、だと思います。うちはその……ちょっとややこしい一族でして……」

うまく説明できずにそう言うと、霞湖ちゃんのお父さんは手で壁を作ってこそっと訊いてきた。

「……警察の御厄介になるような?」

あ。そうだよな、そういう誤解も存在する説明をしてしまった。

「そういうのとは違います。むしろ親族には警察官もいますから」

その返事を聞いた霞湖ちゃんのお父さんは、軽く息を吐くとともに若干前かがみだった背中を壁につけた。

「そう……司くんは、お義父さんがダメだって言った理由、詳しく知ってる?」

「はい……生まれた時からそういう家だってわかってるんで、本屋涯のおじいさんが止める理由もわかっています」

「んー、なんだー、そうなんだー……」

がっくり、といった擬音がつきそうなほど肩を落とした霞湖ちゃんのお父さん。

「あ、あの……?」

どういう反応なんだろう、これ。

続けて、はあ、とため息をつく霞湖ちゃんのお父さん。

「てっきり司くんが霞湖の彼氏だと思って期待しちゃったよ」

「え、なんでですか?」

「だって、娘が好きな人とお付き合いしてたら、嬉しいだろ?」

………。

「そ……ういうもん、ですか……?」

「僕的にはそうだね。霞湖はどう見ても、司くんのこと好きだし」

「え」

「うん?」

「………」

「………」

安定の沈黙。

それをどう読み取ったのかわからないけど、霞湖ちゃんのお父さんは小首を傾げた。

「霞湖から、告白とかされてない?」