「え? だってこんなところまで来てくれるし、手を握っていたし……?」

霞湖ちゃんのお父さんが首を傾げながら言うので、恥ずかしさが増した。

まじかー。俺そんなにわかりやすかったか……でも、

「その……付き合っている、わけでは、ない、です……」

なんだろう、本当のことを言っているだけなのに、自分にグサグサ刃をつきつけている気分だ。

「えっ、そうなのっ?」

本気で驚かれてしまった。

霞湖ちゃんのお父さんの目がまん丸。

言葉を続けにくいけど、会話をしなくては。

「はい……霞湖ちゃんにとって俺は委員長でしかないので、クラスの友達が出来たら、俺はお役御免になると思います……」

「うそ……」

「………」

「………」

霞湖ちゃんのお父さんが絶句してしまったので、今度は本気で俺に言えることがなかった。

気まずい沈黙が流れる。

大体なあ、俺は片想いだけど、成就することはないってわかっているから、霞湖ちゃんに告白する気もない。

なので勘づかれてしまっているのはかなり問題だ。直さないと。

霞湖ちゃんのお父さんが、声を落とす。

「……霞湖が、そう言ったの?」

「? いえ、特に言われたことはないですね……?」

俺の解釈はなんというか、俺の考えたことでしかないけど、それが俺の現実であることも確かだ。

でも、確かに霞湖ちゃんの考えを含んだ言葉ではないことも本当だ。

……どうしよう、こういうときってどうすればいいんだ。助けて流夜さん。

「じゃあ……告白するつもりもない?」

こそっと訊かれて、一瞬言葉に詰まった。

「告白……以前に、俺、本屋涯のおじいさんに、俺の嫁にはさせられないって言われてるんです」

本屋涯のおじいさんの言葉は、つい先日まで忘れていた。

けれど思い出してみたら、納得しかない言葉だった。