彼女たちは唇を引き結び、小さく頭を上下させた。
そして「申し訳ございませんでした」と再び頭を下げて、病室から出て行った。
それからゆうに三十秒を数えて、隣の霞湖ちゃんが長く息を吐いた。
「ふ―――――――――――………」
霞湖ちゃんが吐き出すまで、病室は沈黙に落ちていた。
「霞湖……」
霞湖ちゃんのお父さんが名前を呼ぶと、それまで背を向けていた霞湖ちゃんがくるりと身を翻した。
その拍子に、俺の手からするりと離れる。
「言いたいこと、言った」
「うん」
「後悔はしてない」
「……そうだね」
「でも……本当に、あいつらのひとりでも、しん、死んだら……どうしよう……、私も、あいつらと同じになる……」
今にも壊れてしまいそうな顔をして訴える霞湖ちゃんの前に出てきたお父さんが、優しくその頭を撫でる。
「それはどうなるか、誰にもわからない。それは彼女たちが、本気で償っていく気があるかどうかだ。死に逃げると言うなら、償う気はなく、ただ逃げたことになる。先ほどの断罪が叩かれることもあるだろう。でも、お父さんは、霞湖は間違っているとは思ってないよ。いつだって、お父さんは霞湖の味方だ」
その言葉に呼ばれるように面をあげた霞湖ちゃんの顔が、ゆがんでいく。
「うっ……うぅ……っ」
大きな声は出さず、まるで今、自分ひとりで立ち上がろうとしているただ中というようにお父さんにすがることもせず。
霞湖ちゃんは、静かに涙を流した。