はっとしたように見上げてきた霞湖ちゃんに、うん、とうなずく。

俺も視線を前へ向けた。

「生きて償え、は真理を射ていると思いますよ。部外者の俺が口を挟むことではないかもしれないが、霞湖ちゃんのために言わせてもらう。あなた方がしたことは罰せられることだと理解していただきたい。罪には罰がついてまわる。それがわからないほどあなた方は幼いか?」

「………」

「幼さゆえの無知は許される場合が多いが、あなた方は考えたらずなだけだ。己の欲に従い、他者を傷つけた。俺からも繰り返そう。生きて償え。死に逃げることは赦されない」

霞湖ちゃんの視点は、俺のものとよく似ていた。

補足にしかならないけど、複数の人間から同じことを言われるのは、また違った考えをもたらすと思って口にした。

いじめは犯罪だと俺も考える。

暴行であり、傷害であり、恐喝であり、脅迫であり、侮辱であり、名誉棄損であり、内容によってはほかにも罪状は出てくるだろう。

しかし今のところ、刑事事件に発展することは少ないように思う。

そこを、水束のご家族と、三宮のご家族が乗り越えようとしているのなら。

「……お引き取りください」

押し出すような霞湖ちゃんのお父さんに声に、彼女たちの方がびくっと震えた。

「お引き取りください。我々はまだ――未来にあるかもわからないけれど、あなた方の謝罪を受け入れられる状況ではありません」

「………」

「そして、娘の言葉を止めようとも、意義を唱えようとも、僕も思いません。それが水束の方針です。あなた方はこれから三宮さんにも会いに行くのでしょう。どういうことを言われるか、どういう扱いを受けるかは僕にもわかりませんが……娘の言う通り、勝手に死んだら呪います。あなた方を」

霞湖ちゃんのお父さんの言葉は静かだった。

……呪いを口にしなければいけないほど、気持ちのやりようがない。

俺は呪いが実在していて、それを操る人たちも知っているけれど、そういう存在とはかかわりがないだろう霞湖ちゃんたちも……それを望んでしまっているのだろう。

――しかし反動と代償のことを考えると、霞湖ちゃんにも、霞湖ちゃんのお父さんにも、絶対に使わせないと誓った。