特に乱れのない、平坦な声は、俺の隣から聞こえた。
霞湖ちゃんを見ると、真っすぐ彼女たちを見ていた。
その目には、怒りも悲しみもない。
ただ、見ているだけ。
「謝ったら、桃華ちゃんが帰ってくるんですか? 桐湖ちゃんが目覚めるんですか?」
「……それは……」
「そんなわけないですよね。謝罪は、あなた方が気持ちよくなるためだけの行為です。赦されるためにする行為です」
「………」
「私は赦しません。――お前らは人殺しだ。桃華ちゃんを自殺に追い込んだ、桐湖ちゃんに後を追う選択肢だけを与えた、お前らは犯罪者だ。ゆめゆめ忘れるな。お前らが二人の人間の命を奪ったことを」
「……じゃあ、……どう、すれば……」
「知るか。お前らで探せ。生きて償え」
「………」
「死ぬことに逃げたら、お前らだけでなく、お前らの家族も赦さない。全員呪ってやる。事情を知る者たちから、噂を聞いた者たちから、あいつは人殺しなんだと後ろ指を指されて、迫害を受け、事実と異なる誹りも受け、誹謗中傷の限りをつくされ、それでも生きろ。生きて生きて生きて――そして死ね。生きることは、お前たちに与えられた罰だ」
「……こ、」
「こんなことになると思っていませんでした? 馬鹿め。考えたらずの能無し阿呆者ども。少し考えればわかることだ。命を投げてしまいたくなることを、自分たちがしていたことくらい。それがわからないのは、お前たちが自分だけを愛している、自分だけは赦されると思っている愚者だからだ、それともなんだ? お前らは人を殺しても赦されるのか? 恩赦など与えない。人を死に追いやって赦されることなどないと、毎晩悪夢を見て泣きながら目覚めて後悔するんだな。――桐湖ちゃんや桃華ちゃんは、こんな思いをしていたのか、と」
霞湖ちゃんの声は震えるどころか、凛然としていた。
今まで聞いたことのない言葉遣いに驚いたけど、これが霞湖ちゃんなんだ、と腑に落ちる。
こういう霞湖ちゃんだから、霞湖ちゃんのお父さんは、霞湖ちゃんがここにいることを許したんだ。
震えることも、対象たちから目を逸らすこともしない霞湖ちゃんから、相手の方が耐え切れずに視線を逸らす。
体の脇でこぶしになっている霞湖ちゃんの左手を、自分の手で包んだ。