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霞湖ちゃん李湖ちゃんと、逢った場所で別れて、一人家に向かう。
もともと心どう茶屋に寄り道するつもりだったから、あとはこのまま帰るだけだ。
ポケットから取り出した携帯電話を見たけれど、さっきの着信は母からのメッセージだった。
住宅街から少し離れたところにある、俺の家。
今風の二階建て。
その前に佇む姿があった。
俺と背丈が同じくらいで制服を着たそれが、誰かはすぐにわかった。
「國陽(くにはる)」
名前を呼ぶと、一つ年下の幼馴染が顔をあげた。
まーこいつ、男から見ても端正を通り越して造り物めいて見える顔立ちだ。
普段から感情を面に出さなくて、無表情なのも原因だと思う。
「優大」
「どうした? うちの鍵持ってるんだから入っててよかったのに」
「家主がいないのにそれは問題だろう」
と、真面目に返してくる國陽。
俺は軽く笑って、門を押した。
よく訪ねてくる國陽には、合鍵を渡してある。
もちろん家主である俺の両親から渡されたものだ。
國陽が後ろから声をかけてきた。
「まだ、一人なのか?」
「え? ああ、うん。二人とも、会期中はほとんど帰ってこないよ。土日は帰ってるけど」
「……そうか」
俺の父親は国会議員をしている。
父は普段、宿舎に滞在していて、母もその関係で忙しく、家には俺が一人でいることが多い。
地元票が大事な、政党無所属の国会議員だから、休みの日は帰って来てこちらで仕事をしているけれど。
俺にきょうだいはいなくて、祖父母は別に住んでいるから、結果、普段は実家に一人暮らし状態というわけだ。
「今日はどうしたんだ? 制服で来た辺りは合格点だけど」