びくうっと肩が跳ねた。な、な、な……!

「あの、お願いが、あるのですが……」

なん、で、ここに霞湖ちゃんが……?

驚きすぎて目を白黒させていると、切羽詰まった様子の霞湖ちゃんがベンチに座る俺の目の前に立った。

「優大くん……」

「は、はい……」

「た、助けてくれませんか……っ?」

「……はい?」


+++


その言葉を受け入れない選択肢は、俺にはなかった。

俺の隣には、緊張した面持ちで足元を見つめ、膝の上でこぶしを握っている霞湖ちゃんがいる。

現在、電車に揺られて二人で向かっているところだった。

――小埜病院に。

霞湖ちゃんから、俺を頼ってきた経緯は聞いた。

けれど、俺がいていいものか悩む。悩むけど、来てしまった。

霞湖ちゃんを一人にしておくことが出来なくて。

もし嗣さんに会ったとしても、向こうもこちらの世界にいて長いから、何かあったと察して話しかけてくるようなことはしないだろう。

そこは心配していない。

でも……霞湖ちゃんはどういう気持ちで俺に助けを求めてきたのだろう……。

電車が目的地に着いた。

駅からは直通のバスがあるから、それに乗り込む。

……霞湖ちゃんは終始無言だった。

仕事で来た事しかないから結菜さんの車に乗せてきてもらうことが多かった場所だけど、公共交通機関で行く方法も知ってはいる。

病院の受付で面会証を出してもらって、首にかけて、二人でエレベーターに乗る。

休日なこともあって、面会に来ている人は多い。

霞湖ちゃんが押した階数について、続いて降りる。

後ろのエレベーターのドアが閉まったとき、霞湖ちゃんは足を停めて、肩で大きく息をした。