だから今まで、誰も好きならないようにしてきた。
コントロールできるのが、恋愛感情だと思っていた。
それを、自覚すら出来ていなかったとか。
「どうしよ」
……霞湖ちゃんに、必要以上に接触しないようにした方がいいのだろうか。
でもそれだと、まだクラスメイトと距離がある霞湖ちゃんにはつらいかもしれない。
下心を完全に隠して、報われることのない想いだと割り切って。
「……だーっ! 無理、そんなの無理! 器用じゃないから!」
頭をかき混ぜる。
好きな子が出来たら、そりゃ好かれたいと思うよ。想いが通じれば付き合いたいとかも思う。
――俺にはそれが許されないことだとよくわかっているつもりだった。
だから、告白されても当り障りなく断ってきた。
結婚相手は家が決めることで、それまでに付き合う気もない。
なんて本心は、司家が表立ってどんな家か知られていないため口外してはいけないものだったし、俺もうまくやれると思っていた。
國陽と斎月はお互いが望んで許嫁になったけど、それは斎月が、司家当代当主の花嫁として、唯一認められる存在だったからだ。
俺が誰かを好きになって、この人と一緒にいたいと望んで許されるのは、高位の神祇家の人とかになるだろうか。
生まれてから今まで、神祇家とは仕事でもプライベートでも関わってきたけど、想うような人はいなかった。
だから中学を終える頃には、俺の結婚相手は、やっぱり家が決めるんだろうと改めて思うようになった。
ならばその結婚に誠実でいたいから、それまでにいわゆる、遊んだりはしないでおこうとも決めた。
「……っはー……」
本屋涯のおじいさんの言ったように、霞湖ちゃんをお嫁さんに迎えるのは難しいのかもしれない。
水束は神祇一派や、その派生の家とは関係ない。
一応司家や仕事に関係する家は頭に入れてあるけど、水束という名前はない。
霞湖ちゃんを、高校の間だけの恋人にするとか、俺には無理。
霞湖ちゃんに失礼過ぎるし、そういうことをする男にもなりたくない。
どんな理由があるにしろ。
「……」
空を仰いだ目を隠すように、腕で覆った。
くっそー……。
「あ! 優大くん!」
「!?」