「おじいさん、この本、なんの本?」
「うん? それは外国の歴史の本だよ。優大はもうそんな難しいの読めるのか?」
「國陽の――はとこのお父さんが、色々な本読めって言ってたから」
「そうか。店先に椅子があるから、そこで試しに読んでみてもいいよ」
「ありがとうっ」
――そうだ、本屋涯のおじいさんは、そうやって幼い俺に色々な本を見せてくれたっけ。
「……? おじいさん、あの子、誰?」
「ああ、おじいさんの孫だよ。下の子は、優大と同い年だ」
「そうなんだ……」
「残念だが、紹介することは出来ない。おじいさんみたいな家から、司の家にお嫁にはやれないからな」
「うん……ぼくの結婚する人は、たくさんいるおじいさんたちが決めるって言ってたから、わかってるよ」
――そうだ。幼い俺は、まだ斎月の存在を知らされておらず、そう言われて育った。疑問を持つこともなく。
「……そうか」
――本屋涯のおじいさんは、少し悲しそうな顔で幼い俺の頭を撫でた。そうか……おじいさんは、司がどんな家か、知っていたんだ……。
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「ん……」
目も頭もぼんやりしている。ああ、寝起きか……。
のそっと体を起こす。
今日も今日とてひとりの家。
久しぶりに本屋涯のおじいさんに会ったと思ったら、夢だった。そうだよな、もう亡くなっているんだから。
夢は過去を写したようで思い出したけど、俺、小さな頃の霞湖ちゃんを見たことあったんだ。
おじいさんに遮られて、俺自身もその理由がわかっていたから話しかけることもなかったけど、お母さんの実家に帰って来ているとか、そういうタイミングだったのだろう。
「なんで今……?」
そんな夢を見るんだ?
むう……? と考えるも、答えは見つからず、まあ夢だしな、と学校へ行く準備を始めた。