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「そーいうわけだから、二度と斎月を単品でこっちに寄越すな」
帰宅後、俺は電話で國陽に猛抗議していた。
『優大の気を悪くしてしまったか……』
電話の向こうの國陽声は落ち込んでいるように聞こえる。
「気を悪くするとか、それ以前なんだよ、我らが姫様は」
斎月は基本的に道理が通じない。
俺の彼女と間違えられるの嫌だろ? と言って、俺と接触するのをやめさせようとしたこともあるんだけど、そのとき、「私は國陽くんの彼女だって自分が知ってるから問題ない」と返された。
暖簾に腕押しとはこのことか……。
「とにかく、お前も自分の彼女を俺の彼女だと間違えられるとかいやだろ?」
『斎月は強いから問題ない』
「そういう問題じゃねえんだよ」
『それに尽きるだろう?』
………。頭痛がする。たまに、國陽と斎月は違う惑星の存在じゃないかと思うことがある。
「まあいいや。とりあえず、斎月が一人でこっち来ても、俺に会いには来ないようにして」
『お前さくのこと嫌いだったか?』
「そういう次元の話じゃなくて、俺は普通の学生生活送りたいってだけなんだよ。お前と斎月が目立つことはわかってるだろ?」
『……らしいな』
「そうなんです。だからです」
『……わかった。気を付ける』
「頼むわ」
俺も、國陽には言いたい放題言える。
斎月とは喧嘩友達みたいなもんだし。
実際斎月と殴り合ったら、俺は初撃で負けるだろうけど。