「お前が付き合うくらいならいい子だろ? 友達もいい子な気がするから」
「……俺への雑な信頼やめてくんない? 色々と違う気がするから」
はあ………とため息をつく。
とりあえず、そろそろ教室に戻らないとかな……。
気が重い。
のそのそと椅子から降りていると、律が言ってきた。
「仮にだけど、お前がその美人を彼女だって誤解されたくない人がいたら、その人のことは特別に扱った方がいいと思うぞ」
「……特別?」
「そ。いんじゃね? 一人くらい、誤解されたくなくて逃げた相手とか」
律の顔はにやにやしている。
……誤解されたくなくて……逃げた……、っ!
「おまっ、昨日の見てたのか!?」
思い当って恥ずかしさから叫ぶと律は、あははーと笑った。
「言ったじゃん。美人だなって。見たぞー、お前が転校生の前から逃げるの」
「ち、ちがっ」
「違ってもいいから、まずは教室を鎮めてこい。このままじゃ学校中でお前の見学ツアーが開かれちまう」
う。
それもかなり迷惑で嫌だ。
ああもう、と捨て台詞を残して生徒会室を出た。
昼休みの間にどうにかしないと、霞湖ちゃんにも迷惑をかけてしまう――
「ゆーだーい! 彼女の名前くらい教えろよー」
案の定、教室に戻っても今朝の騒ぎは持続していた。
いやな持久力。