「……………は?」
すき? 霞湖ちゃんを? 斎月はどもりながら続けた。
「いや、その、な? 國陽くんから、そんな話を聞いて……確認? しに……」
「え。別に俺、そんなこと一言も言ってないけど……? 國陽が言ってたの?」
「話していて、そんな感じがした、って……」
「え」
「え?」
「………」
「………えと、違う、の?」
珍しく斎月が困った顔をしている。
じゃない。え、俺が、霞湖ちゃんを、すき? すきってなんだっけ。確か感情の中にあるものだったはずだ。
何かを、誰かを好むこと。
……だれかをこのむこと?
「優大、そこまで赤くなられると何故か私が恥ずかしいんだが……」
「えっ、俺赤くなってんの!? 恥ずかしっ」
「自覚なし……だった?」
斎月は、顔中に、えーと……と書いてある。
「いや、その、自覚なしっつーか……自分が人を好きになることができると思ってなかったから、想定してなかったっつーか……」
「ああ……。優大が誰を好きだろうと私は関係ないんだけど、」
「うん、言いぐさ」
「でも、早めに披露目ておかないと、優大も許嫁を置かれてしまうだろ?」
「う……そう、なんだよなあ……」
俺の家は、一応司内部でも中心核の家なので、許嫁が置かれることは珍しくない。
両親も祖父母も、家が決めた結婚だったと聞く。
家が決めた結婚をしなかったのは、國陽の祖父くらいだ。
――家が決めた結婚が、出来なくなったんだ。
「で? お前が来た理由って霞湖ちゃんのこと探るためなの?」