「そう。学校側の対応が曖昧であるため、自分たちで証拠を集めている模様」
「……どこから仕入れてくる情報だよ」
胡乱に問えば、斎月はなんでもない風に答える。
「情報屋がいるからな。霞湖嬢も、恐らくそこまでは知っているだろう。――だから、苦しんでいる」
斎月の声が、しぼりだすような声音に変わった。
……いくら犯罪の現場に慣れていると言っても、斎月が全く傷つかずにそこにいるわけではないことはわかる。
傷つきながら、もがきながらも、斎月はそこにいることをやめない。
……苦しんで、いる。
「……傷ついて、じゃなく?」
俺の返しに、斎月は軽く息を吐いた。
「傷つくと、苦しいものだ。傷つき続けているということは、苦しみ続けているということ。その苦しみから解放するのは、現実が動いたときであったり、自分が変わろうとしたときだったり、誰かからの言葉があったときとか……とにかく、これがないと苦しみから解放されない、ってことはないんだ」
「……斎月、人生何周目?」
「知らん。くだらんこと言ってると川に突き落とすぞ」
「突然の過激派やめろって……。それで? 何か俺に忠告しに来たのか?」
國陽から言われたことだけでは足りないと思われているのだろうか。
常時忙しいこいつが、わざわざ出向いてくる理由とは。
「いや………」
「? なんだよ」
斎月にしては珍しく口ごもった。
視線をうろつかせているし、挙動不審だ。
俺からイラついた声が出た。
「言いたいことあるなら言えよ。らしくねえ」
「そのー……優大は……」
「あ?」
この期に及んで言い淀んでいやがる。
――斎月は、何か一大決心でもしたような顔で俺を見てきた。
「……水束霞湖嬢が好き、なのか……?」