終わっていない。

霞湖ちゃんは、霞湖ちゃんの家族と三宮さんの家族は、今も傷つき続けている。

それを、自分で止めることは難しいだろう。

家族の命を、割り切って考えることなんて。

「……だからって俺に出来ることは、クラスメイトとして接することしかないよな……」

俺が小埜病院を知っているとはいえ、知っているのは『國陽』であって『俺』であってはいけない。

……霞湖ちゃんや李湖ちゃんとも逢ってしまっているけど。

手助け……と言っても、何をすればいいのだろう。俺に何ができるのだろう。

俺はカウンセラーでもなければ、専門家でもない。

霞湖ちゃんの傷を癒す? そんなことが俺に出来るのだろうか……。

でも、どうにかしたい。苦しんでいるのを見ているだけは嫌だ。

霞湖ちゃんは強い。

でも、強い子だから一人で全部抱えきれる、大丈夫、なんてことはないはずだ。

「……俺に出来ること……」

俺が個人的に司家の権力を使うことはできない。

一般の高校生。普通の男子生徒。その立場が、本来俺のものだ。

「………泣いてほしくねーな……」

クラスメイトだから? 俺だけ知ってしまっているから?

……わからないけど、なんとなく、もう霞湖ちゃんには泣いてほしくないと思った。