いじめは絶対に許されない。
犯罪で、いじめた側は、加害者――犯罪者だ。
俺はそう考えて、思っている。
……さなぎの苦悩に気づけなかった俺たちは、そんな卑劣な奴らの共犯者と同じだ。
クラスのみんなは、そういう意識を少なからず持っている。
だから、霞湖ちゃんに対してああいう態度になったのだろう。
「……本当に」
同じ言葉を重ねると、國陽から言葉はなかった。
さなぎのこと、國陽は知っている。俺から話したんだ。
『……俺はお前の友人として、お前が傷つかない方法を選んでほしいと思う』
「それ言っちゃダメだろ、司のご当主が」
はは、と俺が笑うと、國陽は「むう……」とうなった。
國陽は誰かひとりに肩入れしてはいけない。友人であっても、恋人であっても。
斎月はそれを受け入れて國陽の許嫁となった。
「でも、ありがとな電話。一人だったらもんもんと考えてて袋小路になってたわ」
『それならよかったが……優大、水束霞湖嬢が、今も傷つき続けていることは、見失うなよ?』
「……ああ。忠告、ありがとう」
それで電話を切った。國陽の最後の言葉が、頭の中を駆け巡っている。
「傷つき続けて、か……」
背もたれに深く体を預けて、長く息を吐く。