『話させたのか?』

「いや、色々あってそういう流れになった」

『……優大が隠す色々まで訊きだす気はないが、』

「よく言うよ」

『訊きださないが、大体わかる』

「あ、うん、そういう奴だよお前……」

全部わかっている、そんな奴だ。

俺は慣れているからいいけど、友達になったばかりの奴とかだったら怖いと思うよ。

「わかるんなら省くけど、霞湖ちゃんにあったことはお前が教えてくれたことだけじゃなかったよ」

『不備があったか?』

「不備っつーか、たぶん当人しか知らないことだと思う」

テーブルに置いたファイルのページを繰る。

「水束桐湖さんの理由は、いじめによる後追いだった」

『三宮桃華嬢の……?』

――俺が國陽から聞いていたのは、同じ高校で、女子生徒の自殺が二件相次いでいる。

短期間で起こったことから自殺のほかに他殺の可能性も考えて、事件化することもあるだろう、というものだった。

國陽が知っている、もちろんそれは斎月からの情報だった。

斎月は警察側の人間だけど、事件であればすべてに首を突っ込んでいるわけでもないので、あがってきた情報は知っていても現場の状況は知らなかったようだ。

『……そうだったか』

「うん。霞湖ちゃんは妹だし、当事者だ。今まで話すことがなかったことを、急に嘘をついて話すとは思えない。どうしても俺に話さなければいけない状況だったわけでもないし」

『ああ……』

「お前の代理で行った、小埜病院。あそこにお姉さんがいるみたいだ」

『……こちらから、手は出さない方がいいか?』

「うん。これはお前や斎月が関わる話じゃないと思うんだ。事件化したら斎月も関わることもあるかもしれないけど、まだその状況じゃない。――霞湖ちゃんたち家族や、三宮さんの家族が戦ってるって言ってたんだけど、事件化を望んでいるかは、聞いていないし、訊けない」

『いじめは犯罪だ。事件だぞ、優大』

「うん、俺も、そう思う」

――さなぎのことも、そう思っている。

「本当に……」