「うん。神成神社は厄除けで有名なとこなんだ。大晦日とか行くと、甘酒配ってたりして学校の友達に大体逢うよ」

「―――」

――すっと、水束さんの顔色から色が消えた。

草団子が運ばれてきたときは、興味津々といった様子だったのに。

……今の俺の言葉のどれかに、心に触れてしまうものがあったのだろうか……?

それから水束さんは、黙々と草団子に匙を入れた。

りこちゃんは「おいしいです」と、にこにこ食べていた。



「ごめんなさい、ごちそうになってしまって……」

心どう茶屋を出ると、りこちゃんと手をつないだ水束さんが謝ってきた。

「気にしないで。ってか、俺が無理に連れてったんだし」

「お、美味しかった、です」

堅い表情だけど、水束さんはそう言ってくれた。

「うん。よかったらまた来ようね。あ、りこちゃんってどういう漢字書くの?」

「李(すもも)に湖、です」

「李湖ちゃんか……。水束さんは霞(かすみ)に湖だよね?」

「はい……」

これ以上この話題を広げる気はないといった声と顔だった。

深追いはしない方がいいな、と判断して、俺も話題を変える。

「水束さん、この街初めて?」

「あ……えと、母方の実家のあるところなので、祖父母の家に遊びに来たことがある程度です」

「そうなんだ。よかったら今度案内するよ。いいとこたくさんあるよ。あとここ、結構カフェが多いから、お気に入りのとことか見つかるかも」

俺が笑顔でしゃべっていても、水束さんは無表情のままだ。

ちょっと話しただけだけど、なんとなくわかったことがある。

まず、俺たちクラスメイトを嫌っているわけではないようだ。

それから話しかけて、答えてくれる質問と、様子が変わる質問がある。

水束さんの中で、ひとつのキーがあるようだ。決して触れることを許さない扉が。

うーん、どうするかなあ。あの人から返信はまだないってか常時忙しい人だから、今日中に連絡がないことも覚悟しておこう。

「あ。そうだ、俺のこと優大って呼んでね」