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「俺らのね、クラスから転出した子がいるんだ。女子で、部活内でいじめにあってた」

「………」

「一年生はその子しかいない部活だった。先輩からのいじめに遭って、友達にも、誰にも相談できなくて、行き先も告げずに一人いなくなってしまった」

「………」

「俺たちが、彼女がいじめに遭っていたと知ったのは、全部終わったあとだった。いきなりいなくなってしまって、教師は口を開かなかったからどこにいるかも知る術がなくて、俺たちはクラス全員で理由を探したんだ」

「………」

「そして出てきたのが、先輩によるいじめ。でも、知りえたのはあくまで噂話だけで、彼女も転校しちゃっていたし、証拠はなかった。どうにかやり返したくても、なにもできなかった……。それからだね、みんなクラスメイトを一層大事にするようになったのは。だから、ほかのクラスから見たらうちのクラスは浮いてると思うよ」

「………そう、だった、ですか……」

霞湖ちゃんが、長く息を吐いた。

ここは霞湖ちゃんの家。

李湖ちゃんを先に家にあげたあと、俺にもあがってと言う霞湖ちゃんをそこは断固断って、玄関先で話した。

不用心には気を付けてもらわないと。

「ごめん、大丈夫……?」

昔ながらの造りの家なので、土間が広い。

二人で立っていても十分に余裕があった。

「いえ、話してほしいと言ったのは私ですから」

「おねーちゃーん、きゅうり食べていいですかー?」

家の中から、李湖ちゃんの声がした。

「い、いいよー。届くとこにあるー?」

霞湖ちゃんが玄関から返事すると、「ありまーす。いただきまーす」と応答があった。

視線を俺に戻した霞湖ちゃんと顔を見合わせて、お互いふっと笑ってしまった。

「ほんとに野菜好きなんだね、李湖ちゃん」

「はい。お夕飯入るくらいにとどめてくれるといいんだけど……」

姉のような母のようなことを言う霞湖ちゃん。

「……明日」