「李湖、野菜が好きなんです。おやつも甘いものより野菜を食べたがって……」
「そうなんだ。じゃあ今度もらった野菜持ってくね」
霞湖ちゃんに向けていた視線を李湖ちゃんへうつしながら言うと、李湖ちゃんの顔がぱあっと明るくなった。
「ほんとうですかっ? きゅうりありますかっ?」
「あるよー。トマトもあるよ」
「わーいっ」
るんるんと音がついていそうに楽しそうな李湖ちゃん。
「あの……無理、しないでくださいね……?」
遠慮がちに言われたその様子に、霞湖ちゃんに気を遣わせてしまったかと思って言葉を重ねた。
「いや、無理っつーか、もらってもらった方が俺も嬉しくて……」
「いただきものではないんですか?」
小首をかしげる霞湖ちゃん。
「いただきものなんだけど、農家やってる親戚が、市場に出せないやつとか大量送りしてくるんだ。その度にご近所さんでもらってくれるとこ回ってて。だから、李湖ちゃんが野菜好きならもらってほしいんだ」
本当のことだ。司家は横に付き合いが広くて、自分の家で出来たものとかのやり取りはよくある。
「そう、ですか……ありがとうございます」
「うん。霞湖ちゃんは? 果物とか好き?」
今度は霞湖ちゃんに尋ねれば、こくんとうなずかれた。
「はい。好きです」
「果物農家もいるから、もらったら持ってくね」
「ありがとう……ございます……。親戚多いですね」
「多すぎて俺もよくわかんない」
俺があははっと笑うと、霞湖ちゃんは仕方ないな、という風に軽く息をついた。
そして。
「……このままではだめだって、自分でもわかってるんです」
突然、そんなことを言った。
「うん?」
どういう意味だろう、と霞湖ちゃんを見る。