まるで幽霊でも見るような目で見られて、俺、ちょっと平坦な目になった。

「やっと気づいてくれた……」

思わずため息が出る。

とともに力が抜けて、軒の下にへたりこんでしまった。

よかった……霞湖ちゃん、倒れているわけじゃなかった……。

「え、なんで優大くんがいるんですか?」

霞湖ちゃんが開けた窓から身を乗り出して訊いてくる。

ここが自分の家だと信じられないのだろう。

まあクラスメイトのしかも野郎がいきなり現れたら警戒して当然だ。しかも窓から。

切羽詰まってて思いつくままに行動してしまったけど、もっと考えろよ自分。

でも、今は優先事項がある。霞湖ちゃんも通報を考えている驚きではないようだし。

「説明は幼稚園の道すがらするよ。李湖ちゃん待ってるから」

「あ、そ、そうだっ」

慌てる霞湖ちゃんをなんとか押さえて、鍵をちゃんと閉めてから、早歩きで、来た道を戻った。

「帰るとき幼稚園の前通ったら、李湖ちゃんが霞湖ちゃんを待ってたんだよ。先生も、霞湖ちゃんが来ないって言うから、俺が様子見てくるって話になったんだ」

かいつまんで説明するとこんなところだろうか。

霞湖ちゃんは、「うわー」と顔をゆがめた。

「そうだったんですね……ごめんなさい。迷惑かけてしまって……」

「大丈夫だよ、今日は特に用事もなかったし。さっきは寝てただけなの?」

制服姿のままローテーブルに突っ伏していたから、まさか倒れているのかと俺も焦った。

「はい……。早退してきてから、なんか疲れちゃって……ちょっと目を閉じてるだけのつもりだったんですが……ごめんなさい」

疲れていたからなのか……。

まあ、霞湖ちゃんの状況は現在進行形の問題だから、気の休まる時間もないだろう。

「本気で体調不良とかじゃないって思っていいんだね?」

「はい。大丈夫です。ただ……」

「うん?」

霞湖ちゃんはそこで区切って、少しの間うつむいたまま歩を進めていた。

俺から問いただすのもはばかられて、黙々と隣歩いた。

「……優大くん、桐湖ちゃんにあったこと、知ってるんですよね?」