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「心(こころ)ちゃん、こんにちはー」
俺が水束さんと李湖ちゃんを連れてきたのは、神成神社の参道にある「心(み)どう茶屋」というお茶屋さん。
朱い布を敷いた長椅子と樹のテーブルが店内に並んでいて、お茶と和菓子をいただけるところだ。
ここの草団子は参拝の名物のひとつでもある。
「いらっしゃい。優大くん、と、お友達?」
カウンターの中から姿を見せた和服の女の子は、心どう茶屋の店主の孫娘の御堂心ちゃん。
お店用の色々な和服に合わせるために髪は背中の中ほどまであって、いつも綺麗に結っている。
おばあさんに教わって、今は自分で色々なアレンジをしているそうだ。
現在中学二年。学校以外の時間はここで看板娘をしている。
「転校生なんだ。ぜひともここのお茶とお団子食べてほしくて連れてきちゃった」
「ごひいきにありがとう。座って座って。奥の方が冷房効いてるよ」
心ちゃんに案内されて、一番奥まった席につく。
平日の夕方は参拝者も少なく、店内にお客さんはいない。
参道を歩いている人がお土産用のお団子を見ていて、心ちゃんのおじいさんが店先の椅子に座って接客していた。
おばあさんの姿は見えないから、学校から帰って来た心ちゃんと店番を交代したのかもしれない。
「水束さんとりこちゃん、食べられないものとかアレルギーある?」
「いえ……どっちもないです」
水束さんは俺が勢いに任せて連れてきたので、若干目を白黒させている。
「じゃあ俺のおすすめでいい?」
「は、はい……」
心ちゃんに、冷やし抹茶と草団子を注文する。
りこちゃんにはオレンジジュースがあると心ちゃんが言ってくれたので、それを。
「ここ……皆さんくるとこですか?」
「ん? どうだろう。参道のお店だし、みんなで集まる場所ってわけではないと思うよ。集まるなら駅前のカラオケとかファミレスとかだし。俺はこの先の神成神社の家と親戚みたいなもんで、小さな頃からここに通ってるんだ」
「神成神社の跡取りの娘さんと、私が幼馴染なんです。祖父同士も同じなんで、優大くんは小さな頃から私の幼馴染に連れてこられてたんですよ」
心ちゃんが、最初にりこちゃんの前にオレンジジュースのコップを置く。
それから、葉っぱの形のお皿に載せられた二個の草団子には、それぞれあんこときなこがかかっている。
「これね、厄除け団子って言って、ここの名物なんだよ」
「厄除けだんご……?」