俺が一人で戻ってきたことに気づいた女子が、呼びかけてきた。
「それが……霞湖ちゃんがちょっと様子がおかしくなっちゃって、こっち戻ってきた?」
「見てないよ。優大、何かあったの?」
俺のところに、クラスメイトが集まってくる。
「わからない。話してたら、急に顔色悪くなって震えだしたんだ……」
「探そう。どこで水束と別れたんだ?」
「旧校舎の一階。入ってすぐだった」
「わかった。女子は更衣室とか、女子しか入れないとこも見てほしいから、校舎内を手分けしてくれるか。男子は校舎の外だ」
「うん」
「見つかったらクラスラインに連絡するね」
みんなのてきぱきとしたやり取りで、手分けして探すことになった。
……あのときもこうしていたら、と思うけど、あのときは総てが終わったあとに、俺たちは何があったかを知った……。
「優大、気に病むなよ。クラスのみんな、お前ひとりに任せちまって申し訳なく思ってるんだから」
「……」
「責任感の強いお前には難しいか……。とりあえず、水束見つけて無事かを確認しないとな」
校舎の外へ出る男子たちは、まっすぐ前を見ている。霞湖ちゃんを見つけるために。
一人、俺だけがうつむいていた。
……俺が知った、霞湖ちゃんに起こったことは、誰にも話していない。
霞湖ちゃんが自分から誰にも話していないから、俺から話してはいけないと思っていた。
でも、ここまでみんなに心配をかけてしまっているなら、話した方がいいのだろうか……。
女子が校舎内を探してくれているから、男子は散り散りに校庭から校舎裏と探す。
俺は迷いを抱えながらだけど、女子から連絡が来るのを、そして男子の誰かが見つけるのを待っていた。
……自分が見つけては、いけない気がしていた。
校舎を出て五分くらい経った頃、手にしていた携帯電話が振動した。すぐに目をやる。