「あ……人がいなさそうなところを探して、あそこに……」

「そっか。旧校舎には生徒会室あるんだけど、俺結構そこに居座ってるから、見つからなかったらそこにいると思う」

「生徒会? 委員長だけじゃなくて、生徒会もやってるんですか?」

霞湖ちゃんがそこに反応した。

「ううん。友達が生徒会役員だから入り浸ってるだけだよ」

「クラスの方……ですか?」

「いや、二年生。理系クラスだから会ったことはないと思うよ」

「……彼女とか?」

「え。いやいや、男だよ。小学校から一緒の奴」

純粋な疑問の目で見られ、素で驚いてしまった。霞湖ちゃんもそういう話はするんだ、と。

「……彼氏?」

「え。俺、一応恋愛対象は女性だけど……」

またもや純粋な疑問の目で問われて、ちょっと焦ってしまった。

確か昨日、國陽のことは否定しまくっておいたはずだけど、あのとき霞湖ちゃん落ち込んだ様子だったから、聞いていなかったのかもしれない。

……こんなんでも一応、過去には許嫁もいた身だ。性別女性の。

「そうでしたか。失礼しました」

「えーと……霞湖ちゃんって同性同士の話が好きな人……?」

こそっと訊いてみた。霞湖ちゃんは真顔で答える。

「いえ、特にそういうわけじゃないです。ただ訊いてみただけで」

「そ、そう……」

驚いた……霞湖ちゃんってたまに爆弾落とすタイプだったのか。

「では、優大くん彼女さんはいるんですか? でしたら私、不用意に近づかないようにしますが……」

「いやいやいや。いないって。なんでそう話が飛躍するの」

「飛躍じゃないですよ。いくら頼られがちな性格でも、彼女さんがいたら嫌な気持ちになると思いますよ」

「そういうもん?」

「はい」

また真顔で答えられた。霞湖ちゃん、俺が知ったこと以外にもなんかありそうだな……。

「霞湖ちゃんは彼氏いるの?」

嫌味ではなく、ただ話のネタとしてそう振った。