國陽のお父さんは作家で家にいることが多いから、國陽の家に預けられれば、國陽のお父さんが俺と國陽に色んなことを教えてくれた。
おかげで俺も本好きになった。
律は、はあ、とため息をつく。
「お前が聖人って言われるワケがわかるわ。どこで悟り開いたんだよ」
「え、なにそれ。俺そんなこと言われてるの? 恥ずかし」
謂れのない話に律を見返すと、呆れの眼差しを向けられた。
「言われてるよ。誰にでも優しいのに女子の告白絶対に受けないし、告白されて断った子と気まずくなったりもしないし、委員長こなして勉強トップだし、ほか色々。学年違っても聞こえてくるくらいにな」
「えー……だって忙しくて付き合うとかしてる暇ないだけなんだけど……あと勉強はちゃんと頑張ってるから」
「頑張ってるのはわかるけど、お前ってある意味浮いてるんだよな。完璧すぎて」
「えー………」
そんな評価をいただいても、嬉しいとは思わなかった。
学校では問題起こさないようにしているだけというか、両親にも司にも迷惑かけないようにやっているだけというか……國陽の影やるのに忙しくて恋愛に割いている時間がないのは本当だし。
「お前は出来過ぎっつーか……なんかこう、もっとワガママ言っていいぞ? とか、野郎相手に思っちゃうくらいストイックなんだよなあ」
半ば天井を仰ぐ律。
「えー……俺十分わがままだよ。生徒会もやりたくないって突っぱねたし」
反論すると、律は、うー、とうなりながら答えた。
「それは正当なお前に与えられた選択肢で、お前がそれ選んだだけだからお前の自分勝手じゃねーよ」
「ううーん……? なんか律が言ってること難しい……」
「難しく感じるのは、お前がワガママ言ってねえからだよ。ホントにワガママな奴は自分から認めたりしねー」
「そう、なのか……?」
「お前はもっと他人と関われ。深いところで。小せえ頃から知ってるからわかることだけど、お前基本的に浅く広い付き合いしかしないんだよな」
「え、なに急に」
ほんと、なんで急にそんな話になるんだ。俺、律に心配かけるような友達付き合いしてるの?
「年上からの助言だ。ありがたく聞いておけ」
「え、……うん?」
……なんで立て続けに年上からの助言があるんだろう。