自分の部屋に戻って、スーツを脱いで部屋義に着替える。

はあ、霞湖ちゃんたちに逢ったの偶然だったのに、結菜さんにシメられたし。……自業自得か。

小埜病院の件は結菜さんから國陽に報告がいくけど、俺からもメールで連絡しておくのがいつもだ。

今日も机のパソコンから送っておく。

「んー、今日の仕事終わり。メシ作ろ」

椅子の背もたれに寄りかかって伸びをする。

二階の自分の部屋から、一階へ降りる。

小埜病院の件は、これ以上司が関わる必要はないだろう。

影小路と、月御門もちょっと関わっているから、そっちからどうなったのかの報告も来るだろうし。

「なん作っかなー」

キッチンに入ったところで、チャイムが鳴る音がした。来客だろうか。

ドアホンで応答すると、そこに映ったのは律だった。

『よー優大。メシのおすそ分けだぞー』

「おお、さんきゅー。今開ける」

ご近所さんの律のお父さんとお母さんが、両親が留守がちな俺を心配してご飯をくれることはよくあった。

おかげでいつも作らなくていいから、ほかに時間を割けて助かっている。

「よーす、って、なんかすごく疲れてるな?」

玄関ドアを開けた途端、律に言われた。

「あー、今日ちょっと家の用事で出かけてて」

「そら大変だな」

「あ、あがって。この前のタッパー返すから」

「ん」

俺がドアを閉めるために一度土間に降りると、律は一人でリビングに向かっていた。

律は小学校以前からの友達だから、俺の家にもよく来ていてどう行けばいいのかくらいはわかっている。

けれど、國陽と顔を合わせたことはない。

國陽の方が、律が来るタイミングでは絶対に来ないから。

「あれ、日曜だけど親父さんたち帰ってないの?」

律が誰もいないリビングをきょろきょろしながら訊いてきた。

俺はもらったごはんのタッパーを冷蔵庫に入れながら答える。

「帰ってるけど、事務所に行ってるよ。夜も遅くなるって言ってた」

両親が家にいないのはもう通常だから、特に思うこともない。

……のだけど、律としては思うところがあったようだ。

なんだか難しい顔をしている。

「お前はさー、親に甘えたいとかないの? つか反抗期あった?」

「うーん、遊んでくれるのは親じゃなくてもうち、親戚多いし、反抗期は……あったんじゃないかなー……?」