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「……そういうことでしたか」

「はい、まあそんな話で……誰にも言わないでくださいね?」

結局俺の家につくと、結菜さんに問答無用で首根っこ掴まれてリビングに連れてこられた。逃げられなかった。

「言いませんよ。優大様に変事あれば、國陽様がご心配されます」

ダイニングテーブルに向かい合って座っていると、結菜さんの声は心持ち低めに聞こえた。

「ほんと國陽至上主義ですね」

「いいえ。斎月様至上主義が正しいです。まあそういった話を抜きにしても、簡単に他言できる話ではないことは確かですね」

「ですよね……。俺、いつものノリで國陽に訊いちゃったりして、反省してます……」

「反省されることはよいですが、それだけでなく、それを次に生かしてくださいね」

「はい……」

結菜さんは俺にとって、真正面から説教してくれる大人だ。

父さんや母さんは俺が幼い頃から多忙で、じいさまばあさまも忙しい人たちで、國陽の家に預けられていた期間もあったりする。

國陽の影をやるようになった、俺が十四歳の頃から付き添いをしてくれて、仕事に関して國陽と俺の橋渡し役もしてくれている。

だからまあ、両親以上に逆らえない人でもある。

「この件で私から國陽様にお話しすることはありません。そこはご安心ください」

「ありがとうございます」

「ですが、優大様に支障が出るようでしたら、司家として対応致します」

「う……気を付けます」

「そうしてください。では、私はこれで失礼致します。お邪魔してしまいすみませんでした」

「いえ、俺が原因ですから……」

ものすごく居心地が悪い。自分の家なんだけど。

最後まで厳しい顔をした結菜さんを門で見送って、家の中に入った。

「ど……っと疲れたぁ」

よたよたと、壁に手をつきながら歩く。とりあえず着替えよう。この恰好落ち着かないから……。