+++

「ここで合ってる?」

「はい。すみませんでした。取り乱しました」

「気にしないで」

霞湖ちゃんの家に先に送り届けようということで、霞湖ちゃんの言う住所に先に車を止めてもらった。

そこは平屋の和造りの家だった。

「霞湖ちゃん」

車を降りた霞湖ちゃんに向かって言うために、俺も車を降りた。

李湖ちゃんは霞湖ちゃんと手をつないでいて、きょときょとと俺と霞湖ちゃんを交互に見ている。

「学校で、俺から関わることしないけど、何か助けてほしいこととかあったらいつでも声かけてね。一応、これ俺の連絡先」

そう言って、紙切れを渡した。霞湖ちゃんはそれを受け取る。

「あの、え、と……」
 
受け取ってから、反射的にだったのか、戸惑っていた。

「いらなかったら捨てちゃって構わないから。学校でも話すことはできるし。じゃあ、またね」

二人に軽く手を振って車の後部座席に乗り込む。

李湖ちゃんが空いている手で振り返してくれた。

お願いします、と言うと、結菜さんが車を出してくれた。

窓越しにまた手を振る。

最後まで霞湖ちゃんの顔は戸惑っていた。

「優大様、学校の方で何か大変なことになっているのですか?」

結菜さんが、運転しながら訊いてきた。

「いや、学校つか、俺が勝手に首突っ込んでるだけだから気にしないで」

「それは……」

「ああ、大丈夫。司には迷惑かけないから。やれないほどのことはやらないし、まあ、やれることやるだけだから」

適当な返事で返すと、結菜さんはキッとバックミラー越しに睨んできた。

う。

「優大様」

「……はい」