「これは俺が生涯背負う秘密だからだ。俺が影をやっている國陽は、俺にとって、はとこであり幼馴染であり親友であり、っていう、特別な位置のオンパレードみたいなやつ。そして國陽は、俺には抱えきれないほどのことを抱えて生きることがさだめづけられている。親友として國陽の力になりたい。俺が影を始めた最初の理由は、それだった」
そう、純粋に、それだけだった。
いつからか、その重大さに押しつぶされそうになったこともある。
けれど、辞めるという選択肢は俺にはない。
「………」
今も。
「俺が國陽の影をやってることは、司内部の最高機密に近い案件だ。だから誰にも話せないし、俺も話す気はない。――と言ったところで、俺は友達の誰にも後ろめたいなんて思ってないんだ。これは俺が守り抜くと決めた秘密。だから、誰にも言わず、休みの日にどうして誰とも遊ばないんだ? って訊かれても、素知らぬ顔ではぐらかす。霞湖ちゃんから見て俺の行動は、責めることかな?」
霞湖ちゃんの方を向いて問えば、真剣な眼差しを返してきた。
「……いえ、責めようなんて思いません。芯を貫いている優大くんは、カッコいいと思います」
その言葉にからかっている様子なんてみじんもない。
厚顔無恥な俺だけど、そんな風に言われるとさすがに恥ずかしい。
誤魔化すように、そこには触れないで話を続けた。
「だからだと思うよ。誰も、霞湖ちゃんが触れてほしくないことに触れないのは」
「―――」
その返事には、息を呑んだ霞湖ちゃんだ。
「変わろうとか、変わりたいって思う?」
「……いえ。今の学校での態度は、私が選んだ私の生き方ですから」
右手を胸元あたりに持っていって、こぶしにする霞湖ちゃん。
「なら、俺と一緒だ。俺も、この國陽の影という立場は、自分で選んだ。その上に、司優大を生きている。霞湖ちゃんが今の自分を否定しないでいられるんなら、いいんじゃない?」
そう答えると、霞湖ちゃんは視線をうろつかせた。
「……でも、クラスの雰囲気を悪くしてはいませんか? みんなの気分を害してはいませんか? ……そこは、いつも気にかかっています……」
「んー、そうだねー。みんな、自分たちが霞湖ちゃんに悪いことしてしまってああいう態度を取られてるんじゃないかって心配してるけど、霞湖ちゃんを悪く思うことはないと思うよ? 霞湖ちゃんは、理由は知られたくないんだろ?」
「絶対に」