「みんな?」

「学校の……みんな、です」

問われて、本当のことを答える。

「知らないよ。司の中枢の人以外は誰も知らない。霞湖ちゃんが初めてだね」

「……私が、他の人に話そうとしたらどうしますか?」

「そうだねえ。霞湖ちゃんの記憶をトバすかな」

ひくっと、霞湖ちゃんの顔を引きつったので、「冗談だよ」と言って笑った。

ワックスで癖をつけていた髪を手で梳いて払う。

「國陽の許嫁がね、犯罪学者なんだ」

「は……? どういう意味、ですか?」

「うん。その関係で、霞湖ちゃんがうちの高校に来る前にあったことを知った」

「―――――――」

霞湖ちゃんの顔が一気に青ざめた。

かすかに肩が震えだす。

「他言する気はないよ。誰にも言っていないし、言う気もない」

俺から國陽に訊いてしまったけど、勝手に知ってしまったことを今は申し訳なく思っている。

もっと慎重に行動すべきだった。

知る手段が色々あるからと乱用していたのは確かで、俺の反省するところだ。

「それに、それをネタに友達作れとか、そういうことを要求する気もない。霞湖ちゃんが誰にも知られたくないって言うんだったら、誰にも言わないし探られないように手を廻す。そのかわりに、俺の影武者(これ)は誰にも黙っててね、ってこと」

子供ほど騙せない存在はない。

李湖ちゃんがっつり俺のこと見てきたから、直感で、あーこれは隠せないな。って思ったんだ。

「……何も、思わないんですか……?」

「うん?」

「……桐湖ちゃんのこと、知ったんですよね? 私に……何も言わないんですか?」

「うーん……あ、今度神成神社行かない?」

「はっ?」

「一年に一度の神社の祭事、今月あるんだ。霞湖ちゃんと李湖ちゃんも一緒に見に行かない?」

「………」

霞湖ちゃん、ぽかんとしてしまった。

言われると思っていたこととは違ったのだろう。

「いきますっ。かのうじんじゃってどこですか?」