「優大くん……なんですか?」

初めて名前を呼ばれた。

でも今は、そこに感動している場合ではない。

「ご名答。でも、『國陽』でもある」

「……どういう、ことですか……?」

霞湖ちゃんには答えず、李湖ちゃんを見下ろす。

「李湖ちゃん、ここへは霞湖ちゃんと二人で来たの?」

「はい。でんしゃにのってきました」

「まだここにいる?」

「かえるとこですっ」

「そっか。じゃ、一緒に帰ろうよ。うちの人が車出してくれるからさ」

「そ、それは申し訳ないですよっ」

慌てる霞湖ちゃんの、李湖ちゃんと繋いでいない方の手を摑んだ。

「――俺の秘密、知られちゃったからさ。霞湖ちゃんは今日から俺の仲間ね?」

ひくっと、霞湖ちゃんがさっきの嗣さんのように顔を強張らせた。



+++



「結菜さん、友達見つけたから、一緒に乗せていいよね?」

「はい――はっ⁉ ちょ、ゆう――國陽様! 何を仰るんですかっ?」

「あ、大丈夫大丈夫。学校の友達だからさ。俺のこと、口止める時間ほしいからって意味で」

「……そちらの女の子ですか」

と、厳しい顔をした結菜さんが、俺の後ろにいる霞湖ちゃんを見た。

身長の関係で、李湖ちゃんは見えていないだろう。

無理矢理連れて来たから、霞湖ちゃんも泡食っている。

「あと、その妹さんね」

「……わかりました。むしろ今までばれなかったことが幸運です。どうぞ、お乗りください。向かうのはくに――

「優大でいいよ」

「……優大様のおうちでよろしいですか?」

「うん。よろしく」

霞湖ちゃんと李湖ちゃんを押し込んで、俺も後部座席に並ぶ。

周囲を確認して、結菜さんが車を出した。

ここからうちまでは、一時間くらいかな。