「別に注意しなくていいですよ。いつも他人からかってばかりいるへそ曲がりですから」
霞湖ちゃんが不機嫌そうな顔で返してきた。
そういう意味ではないと思う。
思うけど……。
さっきから見る、霞湖ちゃんの表情は。
色々と――俺にはわからないような色々を超えて、歩いてきた顔で。
これからに不安はあっても、桐湖さんの目覚めを受けてか、すっきりとしていて。
笑顔だと、思った。
食べかけのホットサンドをお皿に置く。
「……これから、色々とあるよね」
俺がそう言うと、霞湖ちゃんも手を空にした。
「そう、ですね……壱生や継名のことだけでなく、大変なことがあると思います。もしかしたら学校を休むようなこともあるかも……でも、私、あの学校を卒業したいって思ってます」
「うん。俺に出来る最良のサポート、するから」
「ありがとうございます。でも、優大くんも委員長とか忙しいんですから、自分のことも大事にしてくださいね」
大変なのは自分なのに、周りを気遣える霞湖ちゃんって、強いだけでなく、すごいと思う。
……うん。大丈夫だ。
ふと、霞湖ちゃんがうつむいた。
「………私が、言っていいのかわからなくて、お父さんにもお母さんにも言わなかったことがあるんです……」
「うん?」
「私は……私が止めた、桐湖ちゃんの修学旅行」
「………」
「あの日桐湖ちゃんを止めたことを、私も、一生をかけて償っていかなければならないと思っています」
「………」
「桃華ちゃんをいじめた人たちを断罪した私ですが、私にも罪はあります。あの日桐湖ちゃんを止めていなかったら、桃華ちゃんにも説明して、桃華ちゃんも行かないようにしていたら――と。……他人を責めるなら、私も償わなければなりません。そういう……それが私の考えで、答えです」
「うん」
「そんな……私ですけど、……優大くんは、……友達、でいてくれますか? いや、私の立場で友達を望むのは筋違いだと思うんですけど……」
友達を望むことは筋違い。
……それが霞湖ちゃんの傷か……。
「あのね、霞湖ちゃん」