「今の時間ならモーニングやってるかな」
「優大くんコーヒー飲める人ですか?」
「飲めるよ。砂糖入れるけど」
「私ブラック派です。ブラックも美味しいですよ」
「霞湖ちゃんつよ。俺にはまだ苦いだけで無理だ~」
小埜病院は総合カウンターの天井が開けた造りで、総合カウンターのみ天上が二階部分と同じ高さになっている。
その二階の手すり沿いにあるカフェからは一階の総合受付と玄関がよく見えた。
ワンコインで頼めるホットサンドのモーニングがあったので、アイスコーヒーセットで注文する。
時期的にはアイスでもホットでもどちらでもいい気候だけど、緊張していた分か、のどが渇いていたのでアイスにした。
霞湖ちゃんは、同じモーニングのホットコーヒーのセット。
宣言通り、楓湖さんのプリペイドカードで奢ってもらってしまった。
御馳走になります。
カフェスペースの椅子は、二、三人いるだけだった。
小さめだけど二人で使える丸テーブルに受け取ったトレーを置く。
霞湖ちゃんと向かい合って座る形だ。
「慌ててるときってお腹空かないんですね」
「確かに」
「実は優大くんが注文してるときに私のお腹鳴ってました」
「そうなの? 全然聞こえなかった。ご飯食べられるって幸せだよね」
「本当に。ちなみにお母さんからメッセ来てて、一時間くらい時間つぶして来いって言われてます」
「そんなに長い時間はさすがに悪いんじゃ……」
今、桐湖さんの話題を霞湖ちゃんにしてもいいのか迷ったので、霞湖ちゃんの話に合わせることにした。
霞湖ちゃんがいくら強いからと言って、弱ることがないわけではないだろう。
病室では一人で衝撃を受けて、言葉を発した。
少しだけ、俺のところで休んでくれたらいいなと思う。
いつだって真正面から立ち向かわなくてはいけないことはないはず。
「いや、なんか私から説明しなくちゃいけないことがある、みたいに書かれているんですけど、さっき何かあったんですか?」
「さっき? ………」
と言うと、霞湖ちゃんだけいなかったデイルームのことか。
あ。
「あー、なんか、桃華さんの弟さん? がどうの、って話を……」
ちらっと聞きました。というと、霞湖ちゃんはあからさまに嫌そう顔をした。