「よかった……これで優大くんに気味悪がられて離れられたら霞湖に地獄を見せられるところだった……」

なんだか不穏なセリフを聞いた気がするけど。

「でも……霞湖がいてくれた、よかった……。私たちには桐湖に、泣け。なんて言えなかったわ……」

「そうだね……」

「桐湖さん……泣くことが出来て、よかったと思います」

「うん……これから桐湖は、たくさん泣くだろうね……。楓湖ちゃん、僕たちで、支えていこう」

「もちろんよ。私たちは、桐湖の親よ。……桐湖に哀しい思いをさせてしまった分を、私たちも償うべきだわ」

お互いを見て、うなずきあうケージさんと楓湖さん。

……そう言える『親』が、実行できる『親』が、世の中すべてというわけではない。

子供の命すら石ころのように見捨てる親もいる。

桐湖さん……本当に、元気になってほしい。明るくなってほしい、とは、言わないから……。

そういえばさっきの霞湖ちゃんと桐湖さんって……。

「あの……霞湖ちゃんと桐湖さんって、割と霞湖ちゃんの方が強気? なんですか?」

その質問に、ケージさんと楓湖さんはまた顔を見合わせた。

そして、先ほどとは違って、今度は何かをこらえているような、困った顔をした。

「そう、ね……親が言うのもなんだけど、霞湖って強すぎるきらいがあるのよね。桐湖が弱いってわけではないんだけど、こう……圧倒的というか……」

「あの強さは、楓湖ちゃんのお父さんとお母さんに似てるなって思うんだよ」

「本屋涯のおじいさんとおばあさんですか?」

「うん。お二人とも、芯を貫き通した方たちだから」

「………?」

その言葉の意味はわからなかったけど、二人からそれ以上の説明はなかった。

訊こうか迷っている間に霞湖ちゃんと先生が姿を見せたので、そのままになった。