「へっ?」
執着? 桃華さんの弟たち?
素で驚いて返すと、今度は楓湖さんが額に手をやった。
「友達同士の話だから、私もお父さんも全部知っているわけじゃないんだけど……友達関係のいざこざ……かしら、そういうのが、霞湖と、桃華ちゃんの弟さんたちの間にあったの」
「喧嘩とか……仲が悪い、とかですか?」
そこからの執着?
そう問うと、ケージさんも楓湖さんもうなった。
「ちょっと違う……みたいなんだよなあ……」
本当によくわからないんだ、とケージさんが言った。
「三宮さんと連絡することもあったのは今までと変わりないんだけど、小埜病院に来たことはなかったんだ。こちらに転院する前のとこには来たことあるんだけど。目覚めたって知って、来ることもあるかもしれない。そしたら、弟さんたちも来るかもしれないと思って……」
つまり、霞湖ちゃんと何かしらの因縁のある相手と再会することがあるかもしれないから、霞湖ちゃんをフォローしてほしい、ということか。
「わかりました。最善を尽くします」
「うん、ありがとう、優大くん。それからきびだんご扱いしてごめん。ほかに言葉がでてこなくて……」
「いえ。本当に、どんな風に思われていても、お役に立てるのは嬉しいです」
そう伝えると、ケージさんと楓湖さんは顔を和ませた。
それから、ケージさんがはっとした顔になる。
「ケージさん?」
「あ、わかった! 元気になれるんだ」
「………?」
「優大くんがいると、僕たち元気になれるんだ。あー、そっかそっか。そういうことだったんだ。だからこんなにも手放しがたいんだ」
「………」
「けーじくん。娘の好きな子口説かないの」
そ、それはなんだかとてつもなく恥ずかしいけど嬉しい……。
「ほら、優大くん真っ赤じゃない。困らせちゃダメ」
「ごめんね、優大くん。見捨てないでほしい……」
「そ、そんなことはしませんので……」
焦って手を振れば、ケージさんはほうっと息を吐いた。