「はい。少し、状態を視ます。どなたか一人だけ、病室に残ってもらっていいですか?」

挙手したのは、霞湖ちゃんだった。

「私が残ります」

そしてケージさんも楓湖さんも、それに反対せず、任せた。

霞湖ちゃんとお医者さんたちを室内に残して、廊下へ出た。

「デイルームに行こうか」

李湖ちゃんを抱っこするケージさんの先導で、日当たりのいいデイルームに入った。

すうすうと気持ちよさそうに寝ている李湖ちゃん。

何があったかを理屈ではわからないまでも、何が起こったかを本能で感じているのかもしれない。

そう思うくらい、普段の李湖ちゃんは明るかった。

無理矢理に、というくらい。

おそらく李湖ちゃんも、無意識なのだろうけど。

幼さゆえの無垢。

「優大くん、なんかまた巻き込んじゃってごめんね?」

「いえ、俺も心配でしたから……」

「病院から連絡来て、楓湖ちゃんに電話したら、優大くんにも言わなくちゃって思ったんだ。なんでだろう……理由ははっきりとはわからないんだけど、そうしようって思ったんだ」

テーブルとセットの椅子に腰かけながら、ケージさんが言った。

「俺としては、マスコットでもきびだんごでも、お役に立てたら嬉しいです」

そうだ、『俺』が役に立てることが嬉しかったんだ。

水束家とのやり取りで。

だから俺も病院に来ることに迷いはなかった。

俺が今まで役立ってきたことは、ほとんどが『國陽の影』としてだったから。

そしてそれが、好きな人と、その家族。

だが、現実を考えて俺の声は沈む。

「……これから、まだ大変は続きますよね」

「そうだね……三宮さんに報告しなければいけないし、どういう反応かも予測がつかないし……それに、彼女たちがどう出てく
るかもある。……なので、優大くんにお願いしたいことがあるんだ」

「なんですか?」

「霞湖のフォローしてやってくれないかな?」

「それはもちろんです。……何かあるんですか?」

ケージさんの顔が、すごく憂鬱そうだったからそう訊いていた。

「……桃華さんの……弟さんたちが、実は霞湖に執着? している子たちで……」