心を殺した。


水束霞湖ちゃんは、そんな眼差しをしていた。

高校一年の夏休みが終わった九月の半ば頃、俺たちのクラスに転校生がきた。

高い位置で結んだポニーテールは毛先が丸まっていて、体躯は華奢、すべてを諦めました――ではなく、感情のすべてを廃したような顔つきで自己紹介をした。

「水束霞湖です」と名乗っただけだけど。

担任は、一番後ろの席の俺の隣を、水束さんの場所に指定した。

「水束さん、俺、司優大です。一応委員長やってるから、何かあったらいつでも言ってね」

俺がいつも通りの笑顔で言うと、水束さんは俺の方を見ることもなく席について、「はい」と、小さな声で答えた。

………うーん? 教室に入ってきたときから何かあったとしか思えない感じだったけど、よほどのようだ。

調べよ。

ちょっと頼れるところがあるから、その人を伝って調べておこう。

あ、脅したり弱みを握ったりするわけじゃない。

ただ、俺が俺の役目を果たしていくために、必要なことだから。

休み時間、特に女子たちが水束さんに話しかけたくてうずうずしているのを察知したのか、授業が終わるとともに、水束さんは教室から出て行った。

それが繰り返された昼休み、女子たちが俺のところへ来た。

「優大、……あたしら態度悪かったかな?」

「水束さんに、もう嫌な思いさせちゃってるかな……」

水束さんを責めるのではなく、自分たちに非があったかと考えるところがみんならしい。

全員しょげているので、ここはみんなを励まそう。まだ俺にも水束さんの行動の理由はわからないけど、今俺に言えることはあるはずだ。

「そんなことないと思うよ。水束さん、俺が話しかけた時もそんな感じだったし、何かわけがあるのかもしんないな。時間はかかるかもしれないけど、ちょっとずつ友だちになれたらいんじゃない? 今はこう、がーっと行かないと言うか、少しずつって感じで、とかどうだろう」

俺の言葉に、女子たちはしょげた様子ながら「うん……」と頷いてくれた。