これは時雨なりの提案だった。
どんな結果になろうがやれるだけのことをしてみたかった。
良い悪いの固定概念に捉われない。
それでも後悔のない人生だと胸を張れるように。
置かれてる立場を冷静に客観視した時、今の自分が生きるためにできることは何かを考える。
「雇うってつまり…ここで働きたいってこと?」
鳳魅の問いかけに時雨は頷いた。
「確かに今の私にとって鳳魅さんの存在は非常に危険です。でも自らの存在を自覚した上で未来に貢献しようと生きる姿は本当に素晴らしいことだと思います。私もここに来て心から良かったと。そう思い思われる生き方がしたいのです。…鳳魅さん」
「??」
「私には…異能がありません」
「!!」
その言葉に鳳魅は息をのんだ。
言ってしまった…。
誰にも言わないと固く誓っていたのに。
知られたら最悪、自分の命はないものだと。
そう覚悟して何とか生き延びる術を模索していた途中だった。
でもこの人になら打ち明けてもいいと思えてしまった。
だからもう後戻りは出来ない。
「正直怖いです。異能のない自分に明日は訪れないかもしれないなんて、ここにきて何回思ったことか。過去の生い立ちは消せません。でもそれを生きられない材料にだけはしたくないんです。悔いの残らない生き方を送ってみせます。それでも鳳魅さんは自分さえ死ねばそれでいいと本気で思ってるんですか?」
「それは……」
「それが本当ならこんな場所で薬など作らずとも。もっと楽なやり方はあった筈です。でもそれを選ばなかった。本当は心の奥底に生きたいと言う鳳魅さんがいるからだと思います」
「……」
「生きる価値なんて誰にでも平等に分け与えられています。どうせなら生きる希望を共に見つけませんか?何度も挫折しました。それでも死にたいとは思えません。生きたい概念を捨て去ることはできないので」
それだけ生きたいのだ。
無能でもなんでもいいから生きたい。
だからこそまだ死ねない。
こんなとこで無様に邪気に当てられ死ぬことだけはあってなるものか。
「私が鳳魅さんの生きる希望になります。邪魅としての生を今後は自分の生きる希望の為に上手く利用するのです」
「!!…凄いね」
やがて鳳魅は困惑の笑みを浮かべる。
「やっぱり君凄いよ。不思議な子だとは思っていたけど。僕の存在に恐れることも憎むこともせずに肯定してくれた。ましてや異能が無いその身一つで渡ってきたとか、、、。相当な覚悟がなければ出来ないことだ」
鳳魅は時雨を感心した眼差しで捉えた。
異能に対し否定的な文を述べることなく、鳳魅もまた時雨を否定することをしなかった。
「母との約束があるんです」
「約束?」
「私が十歳の時、父と名乗る人に久野家へ引き取られましたが。死に際、幸せに生きると母と約束しました。今でも忘れられません」
あの日、何故母はいなくなってしまったのか。
夕方になっても戻らない母親に不安を抱いていた自分の前へ現れた父の存在。
由紀江さんに双子の妹・一華さんの存在。
母の危篤を知らされた日、時雨の人生は壊された。
父は最後まで母の話をしようとはしなかった。
「すまない…」
「いえ、ただ時々思うのです。ひょっとしたら母はまだ生きていて会いにきてくれるんじゃないかって。私自身が未だ母の死を受け入れられてないので」
「それは当然のことさ。君は何も間違ってなどいないよ。母上は素晴らしい人だったようだね」
「はい…尊敬できる人でした」
時雨はゆっくりと目を閉じた。
遠い過去の思い出。
今からやろうとしている行動が例え無謀だとしても。
母はきっと応援してくれるだろうから…久野家での偽りの自分はもうやめにしよう。
出来る事をここで頑張ればいい。
「鳳魅さん、私はここで貴方を救う薬を作ります」
どんな結果になろうがやれるだけのことをしてみたかった。
良い悪いの固定概念に捉われない。
それでも後悔のない人生だと胸を張れるように。
置かれてる立場を冷静に客観視した時、今の自分が生きるためにできることは何かを考える。
「雇うってつまり…ここで働きたいってこと?」
鳳魅の問いかけに時雨は頷いた。
「確かに今の私にとって鳳魅さんの存在は非常に危険です。でも自らの存在を自覚した上で未来に貢献しようと生きる姿は本当に素晴らしいことだと思います。私もここに来て心から良かったと。そう思い思われる生き方がしたいのです。…鳳魅さん」
「??」
「私には…異能がありません」
「!!」
その言葉に鳳魅は息をのんだ。
言ってしまった…。
誰にも言わないと固く誓っていたのに。
知られたら最悪、自分の命はないものだと。
そう覚悟して何とか生き延びる術を模索していた途中だった。
でもこの人になら打ち明けてもいいと思えてしまった。
だからもう後戻りは出来ない。
「正直怖いです。異能のない自分に明日は訪れないかもしれないなんて、ここにきて何回思ったことか。過去の生い立ちは消せません。でもそれを生きられない材料にだけはしたくないんです。悔いの残らない生き方を送ってみせます。それでも鳳魅さんは自分さえ死ねばそれでいいと本気で思ってるんですか?」
「それは……」
「それが本当ならこんな場所で薬など作らずとも。もっと楽なやり方はあった筈です。でもそれを選ばなかった。本当は心の奥底に生きたいと言う鳳魅さんがいるからだと思います」
「……」
「生きる価値なんて誰にでも平等に分け与えられています。どうせなら生きる希望を共に見つけませんか?何度も挫折しました。それでも死にたいとは思えません。生きたい概念を捨て去ることはできないので」
それだけ生きたいのだ。
無能でもなんでもいいから生きたい。
だからこそまだ死ねない。
こんなとこで無様に邪気に当てられ死ぬことだけはあってなるものか。
「私が鳳魅さんの生きる希望になります。邪魅としての生を今後は自分の生きる希望の為に上手く利用するのです」
「!!…凄いね」
やがて鳳魅は困惑の笑みを浮かべる。
「やっぱり君凄いよ。不思議な子だとは思っていたけど。僕の存在に恐れることも憎むこともせずに肯定してくれた。ましてや異能が無いその身一つで渡ってきたとか、、、。相当な覚悟がなければ出来ないことだ」
鳳魅は時雨を感心した眼差しで捉えた。
異能に対し否定的な文を述べることなく、鳳魅もまた時雨を否定することをしなかった。
「母との約束があるんです」
「約束?」
「私が十歳の時、父と名乗る人に久野家へ引き取られましたが。死に際、幸せに生きると母と約束しました。今でも忘れられません」
あの日、何故母はいなくなってしまったのか。
夕方になっても戻らない母親に不安を抱いていた自分の前へ現れた父の存在。
由紀江さんに双子の妹・一華さんの存在。
母の危篤を知らされた日、時雨の人生は壊された。
父は最後まで母の話をしようとはしなかった。
「すまない…」
「いえ、ただ時々思うのです。ひょっとしたら母はまだ生きていて会いにきてくれるんじゃないかって。私自身が未だ母の死を受け入れられてないので」
「それは当然のことさ。君は何も間違ってなどいないよ。母上は素晴らしい人だったようだね」
「はい…尊敬できる人でした」
時雨はゆっくりと目を閉じた。
遠い過去の思い出。
今からやろうとしている行動が例え無謀だとしても。
母はきっと応援してくれるだろうから…久野家での偽りの自分はもうやめにしよう。
出来る事をここで頑張ればいい。
「鳳魅さん、私はここで貴方を救う薬を作ります」



