「わあ、凄い」
暫く歩いていくと目の前には石段が見えてきた。
その両側には青や紫の色がグラデーションよく植えられた紫陽花がたくさん咲いている。
「綺麗だろ。この時期は満開の見頃を迎えるから特に気に入ってるんだよね」
雨が降っているからか花の表面にくっつく水滴の粒が綺麗だ。何よりこの空間は空気が澄んでいて心地がいい。
「…隠れ家みたい」
石段を上り終えて見えた先にはしだれ柳の下に存在する一軒の小屋。
「ある意味隠れ家だけどね。辿り着いた者だけが味わえる秘密のスポットだよ」
中に入ってみると色んな薬草の匂いがした。
床や天井には薬草や花が多く干されており、棚の上には危なそうな実験器具も多く見受けられる。
「ほらほら、そんな所に突っ立ってないで上がって上がって。ここへ来て濡れた体を拭きなよ」
奥の方は段が高くなっていて囲炉裏があった。
鍋がかかっており、近づくと薬草の匂いが強くなった。
「今は夏だし暑いけど今日は少し冷え込むからね」
「ありがとうございます」
受け取ったタオルで丁寧に水気を拭き取る。
着物が濡れているせいか肌寒かったので丁度良かった。
「そういえば自己紹介がまだだったよ。僕の名前は鳳魅。一応邪魅の妖だ」
「私は久野時雨と申します。この度、白夜様の花嫁候補として現世の久野家から参りました」
「なんと、君は若の花嫁様だったのか!術師の噂は聞いてはいたけど直接この目でお目にかかれるだなんて光栄だな。请多关照~♡」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
面白い人だ。
でもこんな離れに位置するお屋敷の奥で一体何をしているのだろうか。
「あ、そういえば蛇!」
忘れるところだった。
拾った蛇の手当がまだ終わっていない。
「ああ、そのことなら大丈夫。中庭にある蓮の池に突っ込んであるから」
「え、中庭の池?」
「そそ、後で見に行くといいよ。蓮には強力な浄化作用があると言われているからね。『睡蓮の五徳』なんて言葉、聞いたことないかい?仏教の教えの一つであり、古来より神話や宗教にも関係が深いんだ。ほら、極楽浄土の画にも蓮の絵が描かれているだろう?」
「あ、確かにそう言われてみれば」
「自らは染まらずに清らかな心を持ち続ける、汚泥不染はその言葉の一つさ。汚い泥の中で逆に養分を吸って水の上に花を咲かせる。汚れることなく咲き乱れる蓮の存在は正に神秘的だね」
ここに来る途中にある池にも蓮の花は多く確認された。
確かにここの池はどこもとても綺麗だった。
「現代的な面から言えば、蓮は泥の中の養分を吸収して花を咲かせる訳だから、大きくて綺麗な花を咲かせている水辺は栄養類が豊富だということだ。でも蓮を育てるにもバランスは必須。その過程さえ保てれば水の水質浄化にも貢献できる」
「随分と詳しいんですね」
「まあね。かれこれ百年近くも生きていれば嫌でも色々な事が分かるのさ」
え…この人、一体いくつなんだろう。
若く変幻をして容姿を変えているせいなのか実際の年齢が全く想像できない。だが百年ということは大正時代から生きていたことはまず間違いないだろう。
「時雨ちゃんが見つけたあの蛇、実はちょっと特殊でね。人の手に頼るよりも自然の治癒力に任せた方がいい」
「特殊ですか?それは一体」
「ふふ、今はまだ分からなくていいの。そのうち嫌でも分かるだろうし」
鳳魅さんは疑問がる私の口元に人差し指をくっ付けると意地悪く笑った。
何だろう…もしかして私遊ばれてる?
暫く歩いていくと目の前には石段が見えてきた。
その両側には青や紫の色がグラデーションよく植えられた紫陽花がたくさん咲いている。
「綺麗だろ。この時期は満開の見頃を迎えるから特に気に入ってるんだよね」
雨が降っているからか花の表面にくっつく水滴の粒が綺麗だ。何よりこの空間は空気が澄んでいて心地がいい。
「…隠れ家みたい」
石段を上り終えて見えた先にはしだれ柳の下に存在する一軒の小屋。
「ある意味隠れ家だけどね。辿り着いた者だけが味わえる秘密のスポットだよ」
中に入ってみると色んな薬草の匂いがした。
床や天井には薬草や花が多く干されており、棚の上には危なそうな実験器具も多く見受けられる。
「ほらほら、そんな所に突っ立ってないで上がって上がって。ここへ来て濡れた体を拭きなよ」
奥の方は段が高くなっていて囲炉裏があった。
鍋がかかっており、近づくと薬草の匂いが強くなった。
「今は夏だし暑いけど今日は少し冷え込むからね」
「ありがとうございます」
受け取ったタオルで丁寧に水気を拭き取る。
着物が濡れているせいか肌寒かったので丁度良かった。
「そういえば自己紹介がまだだったよ。僕の名前は鳳魅。一応邪魅の妖だ」
「私は久野時雨と申します。この度、白夜様の花嫁候補として現世の久野家から参りました」
「なんと、君は若の花嫁様だったのか!術師の噂は聞いてはいたけど直接この目でお目にかかれるだなんて光栄だな。请多关照~♡」
「こ、こちらこそよろしくお願いします」
面白い人だ。
でもこんな離れに位置するお屋敷の奥で一体何をしているのだろうか。
「あ、そういえば蛇!」
忘れるところだった。
拾った蛇の手当がまだ終わっていない。
「ああ、そのことなら大丈夫。中庭にある蓮の池に突っ込んであるから」
「え、中庭の池?」
「そそ、後で見に行くといいよ。蓮には強力な浄化作用があると言われているからね。『睡蓮の五徳』なんて言葉、聞いたことないかい?仏教の教えの一つであり、古来より神話や宗教にも関係が深いんだ。ほら、極楽浄土の画にも蓮の絵が描かれているだろう?」
「あ、確かにそう言われてみれば」
「自らは染まらずに清らかな心を持ち続ける、汚泥不染はその言葉の一つさ。汚い泥の中で逆に養分を吸って水の上に花を咲かせる。汚れることなく咲き乱れる蓮の存在は正に神秘的だね」
ここに来る途中にある池にも蓮の花は多く確認された。
確かにここの池はどこもとても綺麗だった。
「現代的な面から言えば、蓮は泥の中の養分を吸収して花を咲かせる訳だから、大きくて綺麗な花を咲かせている水辺は栄養類が豊富だということだ。でも蓮を育てるにもバランスは必須。その過程さえ保てれば水の水質浄化にも貢献できる」
「随分と詳しいんですね」
「まあね。かれこれ百年近くも生きていれば嫌でも色々な事が分かるのさ」
え…この人、一体いくつなんだろう。
若く変幻をして容姿を変えているせいなのか実際の年齢が全く想像できない。だが百年ということは大正時代から生きていたことはまず間違いないだろう。
「時雨ちゃんが見つけたあの蛇、実はちょっと特殊でね。人の手に頼るよりも自然の治癒力に任せた方がいい」
「特殊ですか?それは一体」
「ふふ、今はまだ分からなくていいの。そのうち嫌でも分かるだろうし」
鳳魅さんは疑問がる私の口元に人差し指をくっ付けると意地悪く笑った。
何だろう…もしかして私遊ばれてる?