「まあ雨が止むまではさ、ゆっくりしていくといいよ」
「ではお言葉に甘えて」
このままでは昼過ぎまで雨が続きそうだ。
お香さん心配しているかな…。
何も言わずここまで出て来ちゃったから心配させていたら申し訳ない。
花嫁の世話役を一任された彼女は心配性な性格からか、時雨の行動を把握したがる傾向にあった。何かあれば直接当主の元に届くように。
「(白夜様は…うん有り得ない)」
今朝のことがあっての今だ。
朝食も食べず怒って退室されてしまったし。
その後どこへ行かれたのか、だが自分のせいで気分を害してしまったのなら誠に申し訳ないことをしてしまったと反省する。
でもそうだよね…よく知りもしない人間相手に花嫁だから仲良くしろだなんて。
突然言われても出来ることの方が少ない。
彼の気持ちも組んであげなくては、しかも嫁いできた娘が異能を持たない無能だっだなんて。
私、この先ちゃんと生きていけるかな、、、。
時雨はまた不安が押し寄せてきた。
「ん~?時雨ちゃん、なんだかぱっとしない顔だね」
「いえ…何でも」
「そ?こんな僕でもよければ相談のるよ?出会えた友好の証に僕から特別な大サービス♡」
鳳魅はウインクをかますと面白そうに前のめりに聞いてきた。
時雨は初めどうしようか躊躇ったが、この際せっかく会えた縁だと思い切って聞いてみることにした。
「では一つ質問いいですか?」
「どうぞ♡」
「これはあくまで仮の場合なのですが。もしも三大妖家に嫁いだ花嫁の中に異能が備わっていない方がいた場合、その方は今後どうなるのでしょうか?」
このバカみたいな問いかけに鳳魅は一瞬ピクリと反応した。
だが直ぐニッコリ笑うと口を開く。
「死ぬよ」
「え、、、」
「ああ、例えがちょいと悪かったかな。正確には殺されるが正しいかな」
時雨がその言葉に固まった。
鳳魅はソファーが置かれた場所に移動すれば気怠げにこしかけた。
机上に置かれたシーシャを片手にフーッと一息、息を吐き出せば、辺りには不思議な紫の煙が立ち込めた。
「まあでもあくまで仮の話だろ?」
「そう…ですね。その…今までここに来られた花嫁に会ったことは?」
「ん~ないかな。花嫁も直ぐに分家に流したって聞くし。でも嫁いできたのは確かだよ」
「その花嫁は今どうなっているのかご存知ですか?」
「分からない。でも死んだことは間違いない。嫁いできた身とはいえ、所詮は人間。昔から妖の方が地位も力もあった。当時の妖は強欲にまみれ権力で支配し、欲に忠実だった。王家でさえ手を焼いていたほどだからね。人間なんて手も足もでない食料がいいとこさ」
「……」
そんな…死んだだなんて。
だけど花嫁が補充されるのは数十年に一度のペースで決まって知らせが届く。だから時雨もまた、前の花嫁が死んだことで送られてきただけにすぎないのだろう。
「だが罰が下ったのか世界の均衡は崩れた。後は君も知る通り、花嫁の存在が世界を救ったってわけ。まあ本当ではあるけど…ただそれもずっとは続かなかった。分かるだろう?人間は脆く儚い。百年と寿命が持たず尽きてしまえば歳を取るのも早い。比例して花嫁の異能も弱っていったのさ」
「なぜ…」
「まあ本来、術の向上とは歳を重ねるごと上がっていくものだ。でもこの世界の邪気レベルは人間には強すぎたのさ。浄化、即ち体内への吸収が花嫁達を弱らせていってね」
花嫁の存在は居るだけで全てを浄化させる御守りのようなものだと思っていた。実際に契約後、花嫁が嫁ぎ始めてから隠世は平和になったと聞く。
だがこれで確信した。
浄化はできる……が、それはつまり、自らの体を犠牲に花嫁達は邪気を吸収しなくてはならない。
一華さんの様子を思い出す。
あの部屋で行われる何かのせいで彼女はゲッソリと窶れていた。
もしやあれこそが邪気による体の弱体化?
一日であれだけの体力を消費しているのだ。
存在していたとされる邪気は更に強力で高い毒性を放つものであるとみていいだろう。訓練と称して行われていたそれが、ここに送られて花嫁がされる行為と何ら変わりない。
「久野家は封印の異能を司ります。過去花嫁がやって来た方ももしや、、」
「ならその子は相当惨い末路を辿ったね。封印師なんて他御三家に比べて圧倒的体へのリスクがデカイ。何と言っても封印だ。文字通り、体に邪気を封印し浄化する。代償は命そのものだよ」
「!!」
鳳魅はクルクルとシーシャを弄べばそう付け加える。
確かに不利な条件ではある。
異能の使いこなしは一筋縄ではいかず、途中で挫折して亡くなってしまう人間も多いのだ。そんな中で一華達は上に立つ存在として訓練をこなしていた。
月一とあってか、一華も数日で体調が回復していた。
だがそれはあくまで現世であって邪気への影響をさほど受けないから。
でもここは?
三大妖家の一つ。
しかも王家に最も近い血を引き継ぐ鬼頭家。
その邪気はきっとどこよりも強力なことだろう。
それを何も持たないただの人間が吸うことがあれば。
「だからね、ただでさえ寿命が短いくせに直ぐに死んでしまう。花嫁を迎えて数十年は保てど新しい補充がいる。異能の力で彼女達もある程度の危険は防げてたみたいだけど。それも数年の命。それをただの人間だったら?はは、尚のこと無理だろうね(笑)」
「そんな…」
逃げなくてもいずれ死ぬということ。
そう言われてしまえば逃げ場はない。
妖に喰われるのではなく、邪気によって殺される。
強い妖からは強い邪気が生まれる。
ふと彼の存在が脳裏をよぎる。
鬼頭家当主様のご子息として、その体には莫大なエネルギーを持ち生まれた鬼神の生まれ変わりとされる。
純血の血を宿す鬼神ともなれば放たれる邪気のレベルは、、、。
「っと、すまない。怖い話をしてしまったね」
「ではお言葉に甘えて」
このままでは昼過ぎまで雨が続きそうだ。
お香さん心配しているかな…。
何も言わずここまで出て来ちゃったから心配させていたら申し訳ない。
花嫁の世話役を一任された彼女は心配性な性格からか、時雨の行動を把握したがる傾向にあった。何かあれば直接当主の元に届くように。
「(白夜様は…うん有り得ない)」
今朝のことがあっての今だ。
朝食も食べず怒って退室されてしまったし。
その後どこへ行かれたのか、だが自分のせいで気分を害してしまったのなら誠に申し訳ないことをしてしまったと反省する。
でもそうだよね…よく知りもしない人間相手に花嫁だから仲良くしろだなんて。
突然言われても出来ることの方が少ない。
彼の気持ちも組んであげなくては、しかも嫁いできた娘が異能を持たない無能だっだなんて。
私、この先ちゃんと生きていけるかな、、、。
時雨はまた不安が押し寄せてきた。
「ん~?時雨ちゃん、なんだかぱっとしない顔だね」
「いえ…何でも」
「そ?こんな僕でもよければ相談のるよ?出会えた友好の証に僕から特別な大サービス♡」
鳳魅はウインクをかますと面白そうに前のめりに聞いてきた。
時雨は初めどうしようか躊躇ったが、この際せっかく会えた縁だと思い切って聞いてみることにした。
「では一つ質問いいですか?」
「どうぞ♡」
「これはあくまで仮の場合なのですが。もしも三大妖家に嫁いだ花嫁の中に異能が備わっていない方がいた場合、その方は今後どうなるのでしょうか?」
このバカみたいな問いかけに鳳魅は一瞬ピクリと反応した。
だが直ぐニッコリ笑うと口を開く。
「死ぬよ」
「え、、、」
「ああ、例えがちょいと悪かったかな。正確には殺されるが正しいかな」
時雨がその言葉に固まった。
鳳魅はソファーが置かれた場所に移動すれば気怠げにこしかけた。
机上に置かれたシーシャを片手にフーッと一息、息を吐き出せば、辺りには不思議な紫の煙が立ち込めた。
「まあでもあくまで仮の話だろ?」
「そう…ですね。その…今までここに来られた花嫁に会ったことは?」
「ん~ないかな。花嫁も直ぐに分家に流したって聞くし。でも嫁いできたのは確かだよ」
「その花嫁は今どうなっているのかご存知ですか?」
「分からない。でも死んだことは間違いない。嫁いできた身とはいえ、所詮は人間。昔から妖の方が地位も力もあった。当時の妖は強欲にまみれ権力で支配し、欲に忠実だった。王家でさえ手を焼いていたほどだからね。人間なんて手も足もでない食料がいいとこさ」
「……」
そんな…死んだだなんて。
だけど花嫁が補充されるのは数十年に一度のペースで決まって知らせが届く。だから時雨もまた、前の花嫁が死んだことで送られてきただけにすぎないのだろう。
「だが罰が下ったのか世界の均衡は崩れた。後は君も知る通り、花嫁の存在が世界を救ったってわけ。まあ本当ではあるけど…ただそれもずっとは続かなかった。分かるだろう?人間は脆く儚い。百年と寿命が持たず尽きてしまえば歳を取るのも早い。比例して花嫁の異能も弱っていったのさ」
「なぜ…」
「まあ本来、術の向上とは歳を重ねるごと上がっていくものだ。でもこの世界の邪気レベルは人間には強すぎたのさ。浄化、即ち体内への吸収が花嫁達を弱らせていってね」
花嫁の存在は居るだけで全てを浄化させる御守りのようなものだと思っていた。実際に契約後、花嫁が嫁ぎ始めてから隠世は平和になったと聞く。
だがこれで確信した。
浄化はできる……が、それはつまり、自らの体を犠牲に花嫁達は邪気を吸収しなくてはならない。
一華さんの様子を思い出す。
あの部屋で行われる何かのせいで彼女はゲッソリと窶れていた。
もしやあれこそが邪気による体の弱体化?
一日であれだけの体力を消費しているのだ。
存在していたとされる邪気は更に強力で高い毒性を放つものであるとみていいだろう。訓練と称して行われていたそれが、ここに送られて花嫁がされる行為と何ら変わりない。
「久野家は封印の異能を司ります。過去花嫁がやって来た方ももしや、、」
「ならその子は相当惨い末路を辿ったね。封印師なんて他御三家に比べて圧倒的体へのリスクがデカイ。何と言っても封印だ。文字通り、体に邪気を封印し浄化する。代償は命そのものだよ」
「!!」
鳳魅はクルクルとシーシャを弄べばそう付け加える。
確かに不利な条件ではある。
異能の使いこなしは一筋縄ではいかず、途中で挫折して亡くなってしまう人間も多いのだ。そんな中で一華達は上に立つ存在として訓練をこなしていた。
月一とあってか、一華も数日で体調が回復していた。
だがそれはあくまで現世であって邪気への影響をさほど受けないから。
でもここは?
三大妖家の一つ。
しかも王家に最も近い血を引き継ぐ鬼頭家。
その邪気はきっとどこよりも強力なことだろう。
それを何も持たないただの人間が吸うことがあれば。
「だからね、ただでさえ寿命が短いくせに直ぐに死んでしまう。花嫁を迎えて数十年は保てど新しい補充がいる。異能の力で彼女達もある程度の危険は防げてたみたいだけど。それも数年の命。それをただの人間だったら?はは、尚のこと無理だろうね(笑)」
「そんな…」
逃げなくてもいずれ死ぬということ。
そう言われてしまえば逃げ場はない。
妖に喰われるのではなく、邪気によって殺される。
強い妖からは強い邪気が生まれる。
ふと彼の存在が脳裏をよぎる。
鬼頭家当主様のご子息として、その体には莫大なエネルギーを持ち生まれた鬼神の生まれ変わりとされる。
純血の血を宿す鬼神ともなれば放たれる邪気のレベルは、、、。
「っと、すまない。怖い話をしてしまったね」



