白鬼の封印師

「始めに言っておくが私には妻と娘がいる。くれぐれも立場をわきまえてくれよ?」

久野家に到着して早々、父からはそう小言をつかれるので黙って頷く。数少ない荷物を片手にやってきた場所はとても大きなお屋敷で自分がさっきまで住んでいた家の何倍も広い構造だ。

「何してる、さっさと着いて来い」

父の言葉にハッとして急いで後に続いた。
重い正面玄関の扉が開かれると中は開けた中庭になっていた。

「お帰りなさいませ。ご当主様」

玄関前には一人の年配男性がいた。
タキシード姿をした執事のような人だった。

「コイツを離室に連れて行け」
「かしこまりました」

父はコートを預けるとそそくさと先に奥へ引っ込んでしまった。
さあどうしたものか、、、
時雨は玄関の脇に佇み様子を伺っていると、男性は振り向きニコリと微笑んだ。

「ようこそ時雨お嬢様。そこにいては寒いでしょう。どうぞ中の方へ」

入ると何やら視線を感じる。
屋敷の使用人らしき人達がジロジロと時雨を観察しているようだった。外部から別の娘が来ると、恐らく耳にでも入っていたのだろう。ヒソヒソと話すその目は腫れ物でも見ているかのようだった。