彼女が何を言いたいのかが分からない。
気は動転するばかりで考える余裕さえない。
「時雨さん」
由紀江さんが私を呼ぶ。
溜息混じりに言われた言葉はどれも衝撃を受けるものだらけだった。
「いいですか?術家にとって双子とは不吉な象徴。私が藤吉様との間に一華を授かったのと同時刻、あの女は貴方を産んだの。日付も時刻も全て一緒。産んだ母親は違えど、双子同然のように産まれた貴方達には周りも気味悪がったの」
「…」
「術家の異能を受け継ぐかは三歳の時に分かるのです。一華は産まれて三歳と満たない内に封力の才に恵まれ、見事久野家を繁栄へと導きました。でもあの女から生まれた貴方は無能。見事にあの女同様、落ちこぼれの才を引き継いだ」
私は幼い頃、よく母上に父のことを聞いたことがあった。
母上はいつも父のことを話す時は悲しそうにしていた。
「ごめんね」といつもそう私に謝りながら。
それでも父のことを憎んだことは無いと。
それを聞いた時、母上は本当に父のことを心から愛していたのだと気づいたのだ。
由紀江さんの話が本当ならば、父は母上と由紀江さんの間に私と一華さんをそれぞれ授かった。
直接的な血の繋がりは無いとはいえ、私達は双子の関係になった。
だが父は母上を愛していなかった。
尚且つ、産まれた私に久野家の異能を引き継いでいないと分かると母子ともに久野家から追い出したのだろう。
物心ついた時から母上は女手一つで私を育ててくれた。
私が十歳にここに引き取られる日、亡くなった訳だが。
一方、由紀江さんの子である一華さんは相伝を引き継いだ。
だからずっと久野家の家業に貢献する逸材として大切に育てられたということだ。
私には無い異能への才能。
「どう?これで分かったかしら?ならさっさと準備に掛かりなさい。無能とはいえ、少なくとも最後ぐらいは役に立って貰わないと。私から藤吉様を奪ったあの女狐だけでも許せないのに。この屋敷で一華の側を彷徨かれる貴方が目障りで仕方なかったわ」
キッときつく私を睨みつけると吐き捨てるような言葉を投げつける由紀江さん。
あんまりだ。
こんな事実を知って言葉なんて出てくる筈がない。
私は悔しくて俯いてしまう。
「お姉様、最後に一つだけ言いたいことがあるの」
一華さんは座ったまま未だ微動だにしない私へニコリと微笑んだ。
「私の為に無能で生まれてきてくれてありがとう。鬼頭家では異能の無い無力な人間だとバレて殺されないことを心から願っているわね。さようなら」
気は動転するばかりで考える余裕さえない。
「時雨さん」
由紀江さんが私を呼ぶ。
溜息混じりに言われた言葉はどれも衝撃を受けるものだらけだった。
「いいですか?術家にとって双子とは不吉な象徴。私が藤吉様との間に一華を授かったのと同時刻、あの女は貴方を産んだの。日付も時刻も全て一緒。産んだ母親は違えど、双子同然のように産まれた貴方達には周りも気味悪がったの」
「…」
「術家の異能を受け継ぐかは三歳の時に分かるのです。一華は産まれて三歳と満たない内に封力の才に恵まれ、見事久野家を繁栄へと導きました。でもあの女から生まれた貴方は無能。見事にあの女同様、落ちこぼれの才を引き継いだ」
私は幼い頃、よく母上に父のことを聞いたことがあった。
母上はいつも父のことを話す時は悲しそうにしていた。
「ごめんね」といつもそう私に謝りながら。
それでも父のことを憎んだことは無いと。
それを聞いた時、母上は本当に父のことを心から愛していたのだと気づいたのだ。
由紀江さんの話が本当ならば、父は母上と由紀江さんの間に私と一華さんをそれぞれ授かった。
直接的な血の繋がりは無いとはいえ、私達は双子の関係になった。
だが父は母上を愛していなかった。
尚且つ、産まれた私に久野家の異能を引き継いでいないと分かると母子ともに久野家から追い出したのだろう。
物心ついた時から母上は女手一つで私を育ててくれた。
私が十歳にここに引き取られる日、亡くなった訳だが。
一方、由紀江さんの子である一華さんは相伝を引き継いだ。
だからずっと久野家の家業に貢献する逸材として大切に育てられたということだ。
私には無い異能への才能。
「どう?これで分かったかしら?ならさっさと準備に掛かりなさい。無能とはいえ、少なくとも最後ぐらいは役に立って貰わないと。私から藤吉様を奪ったあの女狐だけでも許せないのに。この屋敷で一華の側を彷徨かれる貴方が目障りで仕方なかったわ」
キッときつく私を睨みつけると吐き捨てるような言葉を投げつける由紀江さん。
あんまりだ。
こんな事実を知って言葉なんて出てくる筈がない。
私は悔しくて俯いてしまう。
「お姉様、最後に一つだけ言いたいことがあるの」
一華さんは座ったまま未だ微動だにしない私へニコリと微笑んだ。
「私の為に無能で生まれてきてくれてありがとう。鬼頭家では異能の無い無力な人間だとバレて殺されないことを心から願っているわね。さようなら」