「私は絶対に嫌!」
かん高い声が部屋へと響き渡る。
一華さんはブルブルと怒りを露わにキッときつく父を睨みつけた。
「鬼頭家ですって⁈この私をそんな鬼のいる巣窟へ嫁がせようっていうの⁈そんなの死んでもお断りよ!私にはお慕いしている殿方がいるのよ??」
「…貴方、娘がこんなにも嫌がっているのですよ?可愛い娘にもし万が一のことがあったら」
一華さん同様に由紀江さんも今回の話しには納得がいかないようだ。
鬼頭家と呼ばれる鬼の一族に彼女が嫁ぐ。
本来ならば考えられない話だ。
だが父は何とも言えない顔をすると黙り込んでしまう。
「お、お父様!!確かに久野家は異能家の一角。封印を家業とし、日々お国の為にも邪気を浄化する術に秀でてきた由緒ある家系ですわ。私は天才なの。ねえそうでしょ?」
「ああそうだ。お前は久野家の生んだ誇りだ」
「なら!本当に私を大切だと思うのでしたら。私をそんな化け物達がうろつく汚らしい世界に送るだなんてやめて頂戴!」
隠世、今も妖が住まうとされる異世界。
父から聞いた話はどれもこれもが初めて聞く内容ばかりでお伽話のようだった。
つい夢中になって聞いてしまった。
だけどそれが今尚、現実としてこの世に存在しているだなんて信じられない。
だがこれで久野家の実態を大まかに推測することは出来た。
一華さんは久野家相伝の封印の異能を持つ選ばれし存在であるということ。
きっと月に一度、あの部屋で行われていたものは封印師が行う特別な訓練か儀式か何かなのだろう。
「前に久野家の娘が隠世へと渡ったのは実に数十年も前の話。私も久野家当主として三大術家ならびに妖家の話は聞いてはいた。だが…」
「貴方…」
「だがこのタイミングで。まさか我が久野家から娘を出すことになるとは思ってもみなかった」
グッと喉を詰まらせる父。
そんな父を心配そうに見つめる由紀江さん。
一華さんはその様子をみれば、我慢出来ないとばかりに勢いよく椅子から立ち上がった。
「あらそ!お父様は私が可愛くないのね?私が醜い化け物の世界で無様に喰れて殺される。そんな妖の餌食になってしまってもいいっていうのね⁉」
「そんな訳ないだろう!お前は可愛い私の自慢の娘。何としてもこの縁談を阻止しなければ」
「でも貴方、先程の話が本当ならば妖家への嫁入りは拒むことが出来ないと」
妖の妖力が保持される為にも。
両世界が邪気で包まれない為にも術師の花嫁は必須。
縛りによって交わされた契約に則れば両者ともこの約束を破る訳にはいかない。
「…ああ、だから私は考えた。時雨」
「は、はい!」
いきなり名前を呼ばれ慌てて返事をする。
「今の話を聞いたな。一華の代わりに鬼頭家へはお前が嫁げ」
「…私が?」
え、、待って。
鬼頭家に私が嫁ぐ?
隠世へ、私が一華さんの代わりに行くということ?
情報が整理できずに困惑する。
「久野家の今後の為にも、このまま一華をアイツらに引き渡す訳にはいかん。時雨、私はお前を何の苦労もかけずにここまで育ててやったつもりだ。ならば最後ぐらい久野家の役目を果たせ」
「ぷっ」
一華さんは思わず吹き出した。
「まあ良かったじゃない!漸くこれでお姉様は久野家の人間として役に立つことが出来た訳でしょ?光栄なことじゃない!…ま、その無能さが今後を生き抜けるかなんて分かんないけど」
「え?」
目をパチクリさせる私に彼女は可笑しそうに笑った。
「ふふ、何にも知らないのね。いい?アンタは私の双子の姉。双子は本来不吉な象徴なの。でも私は違う。何の異能も継げないアンタの代わりに、久野家の相伝を引き継いでみせたわ」
「…ふ、双子?」
「あら、もしかして知らなかったの?ふん、まあそうでしょうね。双子と言っても実際は血の繋がりなんて左程無い訳だし」
かん高い声が部屋へと響き渡る。
一華さんはブルブルと怒りを露わにキッときつく父を睨みつけた。
「鬼頭家ですって⁈この私をそんな鬼のいる巣窟へ嫁がせようっていうの⁈そんなの死んでもお断りよ!私にはお慕いしている殿方がいるのよ??」
「…貴方、娘がこんなにも嫌がっているのですよ?可愛い娘にもし万が一のことがあったら」
一華さん同様に由紀江さんも今回の話しには納得がいかないようだ。
鬼頭家と呼ばれる鬼の一族に彼女が嫁ぐ。
本来ならば考えられない話だ。
だが父は何とも言えない顔をすると黙り込んでしまう。
「お、お父様!!確かに久野家は異能家の一角。封印を家業とし、日々お国の為にも邪気を浄化する術に秀でてきた由緒ある家系ですわ。私は天才なの。ねえそうでしょ?」
「ああそうだ。お前は久野家の生んだ誇りだ」
「なら!本当に私を大切だと思うのでしたら。私をそんな化け物達がうろつく汚らしい世界に送るだなんてやめて頂戴!」
隠世、今も妖が住まうとされる異世界。
父から聞いた話はどれもこれもが初めて聞く内容ばかりでお伽話のようだった。
つい夢中になって聞いてしまった。
だけどそれが今尚、現実としてこの世に存在しているだなんて信じられない。
だがこれで久野家の実態を大まかに推測することは出来た。
一華さんは久野家相伝の封印の異能を持つ選ばれし存在であるということ。
きっと月に一度、あの部屋で行われていたものは封印師が行う特別な訓練か儀式か何かなのだろう。
「前に久野家の娘が隠世へと渡ったのは実に数十年も前の話。私も久野家当主として三大術家ならびに妖家の話は聞いてはいた。だが…」
「貴方…」
「だがこのタイミングで。まさか我が久野家から娘を出すことになるとは思ってもみなかった」
グッと喉を詰まらせる父。
そんな父を心配そうに見つめる由紀江さん。
一華さんはその様子をみれば、我慢出来ないとばかりに勢いよく椅子から立ち上がった。
「あらそ!お父様は私が可愛くないのね?私が醜い化け物の世界で無様に喰れて殺される。そんな妖の餌食になってしまってもいいっていうのね⁉」
「そんな訳ないだろう!お前は可愛い私の自慢の娘。何としてもこの縁談を阻止しなければ」
「でも貴方、先程の話が本当ならば妖家への嫁入りは拒むことが出来ないと」
妖の妖力が保持される為にも。
両世界が邪気で包まれない為にも術師の花嫁は必須。
縛りによって交わされた契約に則れば両者ともこの約束を破る訳にはいかない。
「…ああ、だから私は考えた。時雨」
「は、はい!」
いきなり名前を呼ばれ慌てて返事をする。
「今の話を聞いたな。一華の代わりに鬼頭家へはお前が嫁げ」
「…私が?」
え、、待って。
鬼頭家に私が嫁ぐ?
隠世へ、私が一華さんの代わりに行くということ?
情報が整理できずに困惑する。
「久野家の今後の為にも、このまま一華をアイツらに引き渡す訳にはいかん。時雨、私はお前を何の苦労もかけずにここまで育ててやったつもりだ。ならば最後ぐらい久野家の役目を果たせ」
「ぷっ」
一華さんは思わず吹き出した。
「まあ良かったじゃない!漸くこれでお姉様は久野家の人間として役に立つことが出来た訳でしょ?光栄なことじゃない!…ま、その無能さが今後を生き抜けるかなんて分かんないけど」
「え?」
目をパチクリさせる私に彼女は可笑しそうに笑った。
「ふふ、何にも知らないのね。いい?アンタは私の双子の姉。双子は本来不吉な象徴なの。でも私は違う。何の異能も継げないアンタの代わりに、久野家の相伝を引き継いでみせたわ」
「…ふ、双子?」
「あら、もしかして知らなかったの?ふん、まあそうでしょうね。双子と言っても実際は血の繋がりなんて左程無い訳だし」