「私は絶対に嫌!」
甲高い怒りの声が部屋に響き渡る。
声の主である一華はブルブルと震え父を睨みつけた。
「鬼頭家ですって?そんな鬼の化け物がいる巣窟へ私を嫁がせようっていうの⁇」
「一華、これは…」
「いや聞きたくない!!私は絶対にそんなとこ行かないわ。私にはお慕いしている殿方がいるの!!」
一華はイヤイヤと首を横に振る。
困った父はそんな娘に言葉を失った。
「…ねえ貴方、一華がこんなにも嫌がっているのですよ?ましてや鬼頭家だなんて。相手は鬼よ?嫁ぎ先で娘に万一のことでもあったら」
由紀江も今回の話には納得がいかない様子。
一華に便乗していた。
鬼頭家と呼ばれる鬼の一族。
それは異世界に住まうとされる妖の一族。
「鬼の妖…か、、、」
時雨がポツリと呟けば小路がそれを拾った。
「ビックリしただろ。なんせ一般ピーポーじゃ到底理解できない領域なんだ」
「小路様は知っていたんですか?」
「まあ大凡はね。俺も普段は仕事上、邪気を狩ってるし(笑)」
椅子に立てかけた刀をつつけば謎が解けた。
いつだって肩に下げていて危ないと思っていたがそういう事だったのか。
「とはいえ、今回はだいぶ深刻かな。代替わりでもしたのかな?例年よりだいぶ早くからの要請ですね」
「ああ…だがアッチには去年にも娘を送っている」
「南條家でしたっけ?ですが噂に聞くと嫁入り前の娘が行方不明だとか。妖力補充の利かなくなった相手に代わり、鬼頭家が久野家に申請してきたと考えれば今回の件も頷けましょう」
行方不明?
どういうことなの??
時雨が小路を見れば、彼は一華に視線を送る。
「例にもなく、今もっとも久野家で霊力の高い女は一華オマエだ。ならやる事は一つだよ」
「は?小路さん、何を言って、、、」
「分からない?大人しく鬼頭家に嫁げと言ってるんだ」
その冷たい言葉に一華はゾッとした。
チラリと垣間見えた小路の顔。
手を組んだ上に顎を乗せれば面白そうに笑っていた。
「お父様!!確かに久野家は異能家の末裔。封印を生業とし、日々国に忠誠を誓い邪気を浄化する術に秀でてきましたが。それでも由緒ある家系に生まれた私は天才なの。ねえ、そうでしょ?」
「ああ、そうだ。お前は久野家の誇りだ」
「なら!本当に私を大切だと仰るのでしたら、私をそんな化け物がうろつく汚らしい世界に送るだなんてやめて頂戴!」
一華は体を震えさせて涙目だった。
お伽話のようなストーリーについ夢中になって聞いてしまったが、、それが今尚、現実と並行してこの世に存在しているだなんてとても信じられない。
だがこれで久野家の実態を大まかに推測することは出来た。
恐らく一華さんは久野家相伝の封印の異能を持つ存在。
きっと月に一度、あの部屋で行われていたものは封印師が行う特別な訓練か儀式か何かなのだろう。邪気というのもそれに関係しているとすれば、彼女が過去行ってきた数々の不明な行動にも納得はいく。
「前に久野家の娘が隠世へ渡ったのは実に数十年も前の話。私も久野家当主として両世界の噂は聞いてはいた。だがここに来て、まさか己の代で娘を差し出すことになろうとは、、、」
「貴方…」
グッと悔しそうに歯をくい縛る父に心配そうな目を向ける由紀江さん。だが一華だけは勢いよく椅子から立ち上がった。
「酷いわ!お父様は私が可愛くないのね?私が醜い化け物に無様に喰れて殺されてもいいっていうのね?」
「な、そんな訳ないだろう!お前は可愛い私の自慢の娘。何としてもこの縁談を阻止しなければ…」
父は慌てて一華に駈け寄れば抱きしめていた。
「でも貴方…先程の話が本当なら、妖家への嫁入りは拒むことが出来ないと」
妖の妖力が保持される為にも、両世界が結んだ縛りは無視できない。
故に術師の花嫁を送ることは必須。
「…ああそうだ、だから私は考えた。時雨」
「は、はい!」
いきなり名前を呼ばれ、時雨は慌てて返事をする。
「話は聞いたな?一華の代わりに鬼頭家へはお前が嫁げ」
「…え」
時雨は驚き言葉を失った。
え、待って、、鬼頭家に自分が嫁ぐ?
一華さんの代わりに嫁入りするということ?
情報は整理できずに困惑するばかりだった。
「あの…お父様、それは一体…」
「久野家の為にこのまま一華を引き渡す訳にはいかん。時雨、私はお前を何の苦労もかけずにここまで育ててやった。ならば最後ぐらい、お前も久野家の役目を果たせ」
「!!!」
すると一華が顔を輝かせた。
「まあそれは良い名案だわ!お姉様にとっても悪い話じゃないでしょ?とても名誉なことじゃない、妖家へ嫁ぐなんて。…まあその無能さで今後を生き抜けるかは分からないけど~」
「え?どういう…」
「ふふ、ホント何にも知らないのね。いい?アンタは私の双子の姉。双子は本来不吉な象徴なの。でも私は違う、何の異能も継げないアンタの代わりに久野家の相伝を見事引き継いでみせたわ」
「…双子?」
「あら、知らなかったの?まあ~そうでしょうね。双子と言っても実際は血の繋がりなんてあまり無い訳だし」
甲高い怒りの声が部屋に響き渡る。
声の主である一華はブルブルと震え父を睨みつけた。
「鬼頭家ですって?そんな鬼の化け物がいる巣窟へ私を嫁がせようっていうの⁇」
「一華、これは…」
「いや聞きたくない!!私は絶対にそんなとこ行かないわ。私にはお慕いしている殿方がいるの!!」
一華はイヤイヤと首を横に振る。
困った父はそんな娘に言葉を失った。
「…ねえ貴方、一華がこんなにも嫌がっているのですよ?ましてや鬼頭家だなんて。相手は鬼よ?嫁ぎ先で娘に万一のことでもあったら」
由紀江も今回の話には納得がいかない様子。
一華に便乗していた。
鬼頭家と呼ばれる鬼の一族。
それは異世界に住まうとされる妖の一族。
「鬼の妖…か、、、」
時雨がポツリと呟けば小路がそれを拾った。
「ビックリしただろ。なんせ一般ピーポーじゃ到底理解できない領域なんだ」
「小路様は知っていたんですか?」
「まあ大凡はね。俺も普段は仕事上、邪気を狩ってるし(笑)」
椅子に立てかけた刀をつつけば謎が解けた。
いつだって肩に下げていて危ないと思っていたがそういう事だったのか。
「とはいえ、今回はだいぶ深刻かな。代替わりでもしたのかな?例年よりだいぶ早くからの要請ですね」
「ああ…だがアッチには去年にも娘を送っている」
「南條家でしたっけ?ですが噂に聞くと嫁入り前の娘が行方不明だとか。妖力補充の利かなくなった相手に代わり、鬼頭家が久野家に申請してきたと考えれば今回の件も頷けましょう」
行方不明?
どういうことなの??
時雨が小路を見れば、彼は一華に視線を送る。
「例にもなく、今もっとも久野家で霊力の高い女は一華オマエだ。ならやる事は一つだよ」
「は?小路さん、何を言って、、、」
「分からない?大人しく鬼頭家に嫁げと言ってるんだ」
その冷たい言葉に一華はゾッとした。
チラリと垣間見えた小路の顔。
手を組んだ上に顎を乗せれば面白そうに笑っていた。
「お父様!!確かに久野家は異能家の末裔。封印を生業とし、日々国に忠誠を誓い邪気を浄化する術に秀でてきましたが。それでも由緒ある家系に生まれた私は天才なの。ねえ、そうでしょ?」
「ああ、そうだ。お前は久野家の誇りだ」
「なら!本当に私を大切だと仰るのでしたら、私をそんな化け物がうろつく汚らしい世界に送るだなんてやめて頂戴!」
一華は体を震えさせて涙目だった。
お伽話のようなストーリーについ夢中になって聞いてしまったが、、それが今尚、現実と並行してこの世に存在しているだなんてとても信じられない。
だがこれで久野家の実態を大まかに推測することは出来た。
恐らく一華さんは久野家相伝の封印の異能を持つ存在。
きっと月に一度、あの部屋で行われていたものは封印師が行う特別な訓練か儀式か何かなのだろう。邪気というのもそれに関係しているとすれば、彼女が過去行ってきた数々の不明な行動にも納得はいく。
「前に久野家の娘が隠世へ渡ったのは実に数十年も前の話。私も久野家当主として両世界の噂は聞いてはいた。だがここに来て、まさか己の代で娘を差し出すことになろうとは、、、」
「貴方…」
グッと悔しそうに歯をくい縛る父に心配そうな目を向ける由紀江さん。だが一華だけは勢いよく椅子から立ち上がった。
「酷いわ!お父様は私が可愛くないのね?私が醜い化け物に無様に喰れて殺されてもいいっていうのね?」
「な、そんな訳ないだろう!お前は可愛い私の自慢の娘。何としてもこの縁談を阻止しなければ…」
父は慌てて一華に駈け寄れば抱きしめていた。
「でも貴方…先程の話が本当なら、妖家への嫁入りは拒むことが出来ないと」
妖の妖力が保持される為にも、両世界が結んだ縛りは無視できない。
故に術師の花嫁を送ることは必須。
「…ああそうだ、だから私は考えた。時雨」
「は、はい!」
いきなり名前を呼ばれ、時雨は慌てて返事をする。
「話は聞いたな?一華の代わりに鬼頭家へはお前が嫁げ」
「…え」
時雨は驚き言葉を失った。
え、待って、、鬼頭家に自分が嫁ぐ?
一華さんの代わりに嫁入りするということ?
情報は整理できずに困惑するばかりだった。
「あの…お父様、それは一体…」
「久野家の為にこのまま一華を引き渡す訳にはいかん。時雨、私はお前を何の苦労もかけずにここまで育ててやった。ならば最後ぐらい、お前も久野家の役目を果たせ」
「!!!」
すると一華が顔を輝かせた。
「まあそれは良い名案だわ!お姉様にとっても悪い話じゃないでしょ?とても名誉なことじゃない、妖家へ嫁ぐなんて。…まあその無能さで今後を生き抜けるかは分からないけど~」
「え?どういう…」
「ふふ、ホント何にも知らないのね。いい?アンタは私の双子の姉。双子は本来不吉な象徴なの。でも私は違う、何の異能も継げないアンタの代わりに久野家の相伝を見事引き継いでみせたわ」
「…双子?」
「あら、知らなかったの?まあ~そうでしょうね。双子と言っても実際は血の繋がりなんてあまり無い訳だし」



