白鬼の封印師

帝は術家の長達を集めた。
この話が本当なら、隠世に妖を追い返せる。
そしてもう二度と現世へ、妖が干渉を示すことが無いように。
何か強力な縛りでも結んでしまおうと考えたのだ。

だがここで次の問題が発生した。

隠世に住まうとされる妖王。
それは妖の頂点に君臨する強力な支配者。
契約を持ち込もうにも一筋縄ではいかないだろう。
帝はどうしたもんか頭を悩ませていれば、例にもなくまた術師からは提案があがった。それは封印を異能に持つ長だった。


術家から産まれた、最も霊力の高い娘を隠世へ嫁入りさせてはいかがか、


帝はこの提案に驚愕した。
だが封印師は至って冷静だった。
妖は妖力が欲しい。
だが仮に人間を喰わずして妖力が保たれるとなればどうか。
現世に干渉する手間は省ける。
術家の人間は霊力に恵まれ、人には見えないものを見る力があった。
邪気を浄化し妖を祓う。
それほどの力があれば、妖の妖力を充分に補うこともできるだろう。

「いかがなものか?」

封印師の提案に帝は半信半疑だった。
だが封印師に便乗して他の長達も肯定的だった。

「しかし母体が減れば術師の数も減ろう。数十年に一度、その代に産まれた娘を送るのはどうか」

帝は仕方なく承諾を吞んだ。
これにより名家は三大術家として正式に公の場に公表がされたのだ。

穢れを封印する封印師の久野(くの)家。

厄を神力で払う陰陽師の八雲(やぐも)家。

害を魔力で破砕する魔導師の南條(なんじょう)家。

帝は長達を引き連れ隠世へと出向くと妖王に謁見した。
つまり今後は隠世に術家の娘を嫁入りさせる。
代わりに妖の妖力を術家に引き渡す。
双方にとって悪くはない話だろうと。

すると意外にも妖王は慈悲深き百目鬼の妖だった。

自分にも理解出来ないが、隠世に住む妖達は妖力と同時に邪気を生むのだと。その邪気は強い妖ほど大量に邪気を生む。それを体内に吸い込み続けると理性を失い、醜い化け物になってしまうという。
理性を失った妖は本能のまま人間を喰らう。
そして最後には朽ち果ててしまう。
隠世が滅びてしまう。

人間を喰らえば強い妖力が手に入る。
だが己の邪気を浄化することは出来ない。

今の隠世は邪気の増加が抑えきれない状態にあると述べたのだ。