白鬼の封印師

久野家に来て数年も経てば、段々この家の内情が分かってきた。
やはりここは他の家とは何か違った。
まず時雨が疑問を感じたのは外部との繋がりだ。
父は滅多なことがない限り敷地から外に出ない。
そればかりか久野家の正面門にはいつだって入れ替わりで門番が見張りをしていたし、外部からの訪問には厳重な取締りが規制されていた。

だが何よりも不思議だったのは一華だ。

「時雨、待って」
「はい?」

外への外出中、急に立ち止まった一華は遠くをじっと見つめる。
視線の先には園児達が公園で遊んでいた。
一華は手を前に何か力を込めて唱えれば数秒後、何事もなかったかのように歩き出すので不思議だった。

「…行くわよ」
「はい…」

何だったんだろう。
時雨は前を歩く一華を見つめる。
公園を振り返ってみても特に変わったとこはない。
だがこんな事が外部ではしょっちゅうだった。

それを嫌でも感じさせる要因が内部でもあった。

「時間だぞ。一華、早く来なさい」

月に一度、父に連れられて一華は消える。
『立ち入り禁止区域』と書かれた屋敷の地下にある部屋の中、一日中こもれば出てこないのだ。そこは暗い洞窟のような場所で中には札がびっしりと貼られ気味が悪かった。

「一華さん、父が呼んでいます」
「分かっているわよ!…ほんと、アンタは良いわよね」
「え?」

今回も着替えの最中、不意に一華がそう呟いた。
不服そうに着物へ袖を通せば、そもそもこの装い自体大嫌いのようで機嫌も悪い。白い生地をベースとした漢服のような衣装。一華はぎろりと時雨を人睨みすれば、ふんっと部屋を出て行った。

「……一華さん」

次に彼女が戻って来るのは明日の朝。
決まって顔をゲッソリさせて出てくるのだ。

まるで何かに魂を吸い取られたかのように。

「っ!」

時雨は身震いをして首を振った。
父はいつだって時雨に言い聞かせていた。

「何も見るな」、「何も詮索するな」と。

だから素直に何も知らない顔で過ごすことしかできなかった。
だがそれでも感じる。
年々増加する…一華からの嫌な気配。

それは酷くなるばかりで、、、

時雨は時々、一華が…

この久野家が不気味に感じるのだった。